「まることの世界」の実現に向けて
 “活かし合って取り次ぐためのレシピ”

平成29年8月号掲載

 私は、昨年の2月号と5月号の本稿で「おふくろの味のレシピ」と題した文章を紹介し、黒住教婦人会の機関誌『お道の婦人』(平成28年発行)では「おふくろのための “おふくろの味のレシピ”のレシピ」という「お道のおふくろ」に向けた「レシピの活用法」を寄稿させていただきました。本来、レシピ(調理の手引書)など必要なかった「わが家の味」の作り方を、あえて書き記して示さないと次世代に伝わらないという現実は、今後途絶えさせてはならない大切な伝統や文化や信仰の継承全てに共通する深刻な問題で、新たな発想と努力と工夫が必要であることを申し上げたかったのです。

 本稿先月号で、いよいよ来月18日に迎える教主継承式にて発表する「告諭」の基本理念として
 奉祈(いのりたてまつる) 人皆(ひとみな)の心の神の御開運
  天照らす神の御徳(みとく)を取り次ごう
    互いの誠を活(い)かし合って
と呼び掛けさせていただくと申し上げました。本稿では、「告諭」には詳しく紹介できない “活かし合って取り次ぐためのレシピ”を記しておきたいと思います。

「まることの世界」の実現に向けて
 “活かし合って取り次ぐためのレシピ”
一、祈る
  (1)感謝の祈り

   まず現在只今(ただいま)、ここに生かされて生きていることへの感謝を、神様(天照大御神、八百萬神(やおよろずのかみ)、教祖宗忠神)とご先祖様に申し上げることが、黒住教信仰の全ての基本です。「おかげをいただき、有り難うございます」と、毎日欠かさず、とりわけ朝日に向かってお礼を申し上げることが、黒住教の祈りの原点です。

  (2)人のために祈る
   自分自身のことに止(とど)まらず、自分以外の人のために祈る。願わくは、自分のことを後回しにして、周囲の病み悩み苦しむ人のために祈る。それは、互いの誠を活かし合って “日の御徳”を取り次ぐ(お取り次ぎする)上で最も尊い行為であり、結果的に自らも有り難い “日の御蔭(みかげ、おかげ)”をいただける「まることの道」なのです。

二、活かし合う
  (1)いかす

   黒住教は、全てを「いかす(生かす・活かす)」宗教です。一切万物を生かし育(はぐく)む生々発展の “日の御徳”のはたらきの中で、天照大御神とご一体の教祖宗忠神は、私たちをより元気に、より明るく、より良い方へと導いて下さっています。この方向性を重んじて、何事も有り難く(有り難うなって)活かすことが黒住教の生き方です。

  (2)互いの誠を活かし合う
   「人は天照大御神の分心(ぶんしん、心の神)をいただく神の子」が、黒住教の教えの根本です。そして、人の真心(誠)に顕(あらわ)れる “心の神”のはたらきが一層顕著に現れる世の中が「まることの世界」です。一人ひとりが誠実に自らの誠を尽くして、お互いに思いやって互いの誠を活かし合って、全ての人々が和やかに共に栄える「まることの世界」の実現が黒住教の目指すところです。

三、取り次ぐ
  (1)発信する

   教祖宗忠神は、“日の御徳(天照大御神のご神徳)”の有り難さを「世の人に残らず早く知らせたい」とひたすら願われました。この「御聖願(ごせいがん)」が成就した社会が「まることの世界」です。広く世界に思いを馳(は)せて、まずは周囲の人々に、“日の御徳”の尊さを、教祖宗忠神の素晴らしさを、そして黒住教の魅力を、一人ひとりが発信者として、一人でも多くの方にお知らせしましょう。

  (2)繋(つな)ぐ・結ぶ
   この道(黒住教信仰)は「人となる道、すなわち神となる道」です。全ての人に内在する “心の神”の開運(尊いはたらきが発揚(はつよう)されること)のために、わが心を養うことが修行です。代々黒住教にご縁のあるお道づれのご子孫は元より、広く世の人々に御教えを伝えて、守られて幸(さき)わう「まることの人」を育てる人づくりこそ、黒住教の使命です。“日の御徳”をしっかり取り次いで、ご神縁を繋ぎ・結んでまいりましょう。

 なお、「一、祈る」の実践のために、昨年5月号の本稿で紹介した「《祈りの誠》の “おふくろの味のレシピ”」を、あらためてお読みいただきますよう、お願い申し上げます。