国内外での《奉仕の誠》–“激働”の黄金週間報告 —
平成28年6月号掲載去る4月14日と16日、熊本県を中心に甚大な被害をもたらした「熊本地震」が発生しました。犠牲者のご冥福と被災地の一日も早い復興を衷心よりお祈りするとともに、今も苦難の中にある被災された方々に心から御見舞いを申し上げます。
「前震」と呼ばれる14日の地震発生後、直ちに実家のある熊本県の益城町に向かったのが、本教とご神縁の深い国際医療ボランティアAMDAの幹部スタッフの難波妙女史でした。今回の震源地になった益城町の出身である女史の初動は、国内外で緊急救援活動を展開してきたAMDAの今までの動きの中でも特筆すべき迅速な対応となり、彼女の母校である町立広安小学校の保健室で早速AMDAによる救急医療活動が開始されました。
AMDAグループ代表の菅波茂氏(教祖神直門大國武介大人※の末裔)から出張中の私に大学生ボランティア派遣要請の電話が入ったのは、4月22日のことでした。元より私の一存で決定できる話ではなく、岡山経済同友会の執行部と学生募集を担当する大学コンソーシアム岡山の協議の結果、本誌別掲の岡山県内の大学生ボランティアの派遣が急きょ実施されることになりました。
東北支援の実績から私が団長を依頼されることは想定内でしたが、後述しますように4月27日から5月2日まで、韓国・ソウルで開かれる「アジア宗教者平和会議(ACRP)」の役員会議に出席することが決まっていたので、わずか数日間での実施計画の推進は準備段階から“激動・激働”の作業になりました。
カレンダー通りに講義のある大学生が動ける連休と募集と準備のための必要日数が考慮された結果、まるで私の帰国に合わせるかのような日程になり、まさに綱渡りの行動でしたが、2日の夜に帰国して、帰宅後すぐに着替えて最終便で広島まで移動することで、翌3日に学生たちが岡山から乗ってきたバスに熊本駅で迎えてもらい、午前9時30分に計画通り広安小学校に入ることができました。
小学校までの移動中、私は心すべき注意事項を学生たちに話しました。それは、震災2週間以降の被災地での支援活動の難しさでした。
被災直後の緊張と興奮の数日間が過ぎ、心身ともに疲れ切って直面する先行きの見えない過酷な現実に、被災者もそして地震発生直後から現地入りしている救援者・支援者も非常に神経質になってしまうという、全ての災害に共通する難しい時期が2週間を過ぎた頃の被災地なのです。
21年前の阪神・淡路大震災に際して本教が行った「わたがし作戦50日」で、炊き出しをする私たちがたびたび文句を言われたのもこの頃でしたが、「させていただく」という先代の五代教主様が御教え下さった“奉仕の精神”のおかげで乗り切った体験を学生たちに話しておくことができたのが、今回の団長としての一番の仕事だったように思います。掃除機の音がうるさいと怒鳴られ、喫煙者の休憩中の一服に苦情が出され、同行記者の取材が厳しく監視されましたが、「『支援しに来てあげている』ではダメ!」と念を押していたのが役に立ったようで、トラブルはありませんでした。
わずか3日間でしたが、授業再開直前の校舎と校庭の清掃・整備と、今後しばらく避難所として使われる体育館の設営作業を、校長以下関係者に大変喜んでもらえたのは嬉しい限りでした。なお、滞在中も余震が続発して、教主様はじめ、私たちの動向を知る方々にご心配をお掛けしましたが、すべて避難所内での活動でしたし、体感した揺れも2回だけのことでしたから、危険を感じることはありませんでした。引き続き、被災地への思いを寄せて募金等へのご協力をお願い申し上げます。
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ところで、“黄金週間”前半の国際会議についても、報告させていただきます。
昭和51年(1976)にシンガポールで開かれた第1回大会で、開会式と閉会式で教主様が祈りを捧げられたのが「アジア宗教者平和会議(ACRP)」です。ちょうど本誌今月号の「道ごころ」で紹介されているように、この大会にはわが国の宗教界の大先達・葉上照澄師も出席されていますが、その時から今年で40年になり、秋には日本で記念大会が開催される予定です。節目の年の役員会議ということもあり、私は日本委員会の一員として出席の要請を受けていました。
詳細の報告は控えますが、アジア各国を主とする16ヵ国から60人の出席者がそれぞれの立場から発言する場なので、「会議は踊る、されど進まず」になりがちで、我々日本委員会のメンバーも積極的に発言して、何とか実務的な議論ができました。期間中には、韓国委員会と日本委員会の交流会も開かれ、宗教者レベルでの一層の信頼構築に向けた有意義な会合となりました。
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最後になりますが、本誌先月号で報告されましたように、明年9月18日の教主様満80歳のお誕生日に、謹んで第七代黒住教教主を拝命することになりました。修行未熟の身を深く顧みながら、誠心誠意道の誠を尽くさせていただくことを、ここにお誓い申し上げます。今月は“激働”の黄金週間の報告をいたしましたが、教主様ご健在による副教主の立場なればこその国内外での教団外活動と心得ています。教主ともなれば、幾分か控えざるを得ない《奉仕の誠》も増えてこようかと思います。何はさておき、健康な身体を賜り、常に天照大御神とご一体の教祖宗忠神に御守護りいただいていることに心から感謝しながら、それを過信することなく、教主就任以降は《祈りの誠》に一層の重きを置いて重責を果たしてまいらねばと心を新たにしています。
※大人:先生の意