あの日から5年…

平成28年3月号掲載

 甚大な被害をもたらした東日本大震災から5年の3月を迎えました。15,894人の犠牲者と2,563人の行方不明者(ともに今年1月8日警察庁発表資料)、そして3,400人を超す震災関連死と称される昇天された方々と18万人もの避難者(ともに復興庁発表資料)という数の多さを実感しながら、それ以上の方々が今も苦しみの中にいらっしゃることを深く心に刻み、犠牲者のご冥福と被災者の心身のご回復を、あらためて衷心よりお祈り申し上げます。

 今年も、3月11日午後2時46分に黙祷を捧げて諸宗教で祈る「RNN慰霊祭」を、神道山の日拝所にて執り行います。震災直後から一カ月間の街頭募金を協力して行ったRNN(人道援助宗教NGOネットワーク)のメンバー有志と、平成23年4月29日に四十九日法要と五十日祭としての慰霊祭をつとめて以来、翌年の3月11日から毎年、地震発生時刻に合わせて黙祷して開式する「RNN慰霊祭」を、日拝所を斎場として行ってきました。大震災を“風化”させないためにも、仏教で重んじる七回忌になる来年は当然として、せめて神道でいう十年祭まではつとめさせていただこうと話し合っていることです。

 ところで、詳細は本稿来月号で紹介しますが、私が世話役の事務局長をつとめているRNNは、今年発足20周年を迎えました。その記念の企画として、昨年4月からFMくらしき(倉敷市)で「心ひとつに!RNN」という月一回のラジオ番組を、永宗幸信RNN委員長(天台宗本性院住職)と私、そしてゲストとしてRNNのメンバーを迎えて放送してきました。シティーFMと呼ばれる地域に根差した小規模な番組ですが、インターネットを通じて世界中どこからでも放送を聞くことができるとともに、今までのプログラムをRNNのホームページからいつでも聞けるという、デジタル時代ならではの対応がなされています。

 このラジオ番組の先月のゲストとして迎えたのが、AMDA大槌・健康サポートセンターの佐々木賀奈子さんでした。岩手県上閉伊郡大槌町の自宅兼職場の鍼灸院で被災し、自身が津波に流されながら奇跡的な生還を遂げている彼女は、鍼灸師という専門技術を活かして、今も苦しみ喘ぐ人々の悲しみに凝り固まった心身を解きほぐす活動を続けています。2年前の2月11日に、神道山・大教殿を会場にして開催された「RNNヒーリングコンサートⅨ~東日本大震災被災者・物故者への“癒しと祈りの和奏会”~」にも駆け付けて、本教、そしてRNNとのご縁を涙ながらに語ってくれましたが、大震災発生以来の5年間、岡山経済同友会主催のボランティア大学生派遣活動も含めて私が関わった復興支援活動に、佐々木さんの存在は欠かせませんでした。本誌がお手元に届く頃にはラジオの放送は終わっていますが、先述のようにインターネットで聞けるので、RNNのホームページを通して聞いていただければ幸いです。

 佐々木さんの所属元でもある、本教とご縁の深いAMDAが「遅いか早いかの差こそあれ、必ず起こる“その時”のために…」と、真剣に取り組んでいる「南海トラフ地震・津波」に備えた対策も、この5年間から学ぶべきことです。AMDAのスタッフとして震災直後の大槌町に入ったRNNメンバーの宮本龍門師(真言宗御室派長泉寺住職)の体験は、犠牲者の遺体に宗教者が手を合わせて祈ることが、まだ厳しい現実を受け入れられない遺された家族の掛け替えのない救いになることを教えてくれました。また、宗教施設が避難所として使われる際の数々の心得は、教会所所長・総代各位にも知っておいていただきたいことばかりでした。

 「忘れない…」そのためにも、この5年間で生じた新たな出会いや学びを「難有有難」の御教えとして、深く心にいただきたいと思っています。