『黒住教二百年誌』まえがき

平成27年11月号掲載

  詳細は本誌来月号に紹介されますが、去る10月10日(土)、11日(日)、12日(祝)の3日間、「大元・宗忠神社ご鎮座百三十年記念祝祭」が有り難く斎行され、4年にわたる“祭り年”も有終の美を迎えつつあります。今月は、昨年の「立教二百年大祝祭」を中心とするこの尊き節目を記念して出版の準備を行ってまいりました『黒住教二百年誌』の「まえがき」の元原稿を事前に紹介いたします。お手元に届けられる予定の来年早々を、楽しみにお待ち下さい。

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 平成26年(2014)、黒住教は立教二百年を迎えました。この嘉節に、『御年譜に学ぶ』と『立教二百年への道』、および記録動画DVDからなる『黒住教二百年誌』が発行され、黒住教のお道づれ(教徒・信徒)のみならず、広く多くの方々に教祖宗忠神について、そして教団の歴史について深く知っていただけることを、心から有り難く思っています。

 『御年譜に学ぶ』は、黒住教の教典である「教書」に綴られた「御年譜」を、黒住信彰教学局局長が丁寧に辿りながら語り記した“黒住宗忠伝”です。戦前は「西の宗忠、東の(二宮)尊徳」とも称されていたとのことですが、まずは人徳者・偉人としての黒住宗忠という人間の魅力を大いに感じて、敬愛と敬慕の念を強くしていただければ嬉しく存じます。次に、黒住宗忠という師匠の言葉と振る舞いを自らの人生の手本・教えとして学んで、素直に私淑する気持ちになっていただければ幸いに思います。そして、人智を超えた霊験あらたかな尊いはたらきを祈り・取り次がれた黒住宗忠という神への尊崇と感謝の心で、日々手を合わせて拝礼していただければと願います。

 もちろん、この三段階の読み方を無理強いするものではありませんが、最高の人格者且つ指導者且つ“神人”(霊徳者)であった黒住宗忠という方の誕生から昇天後数年までの物語を、過去の数々の出版物や記録をもとに、信頼のおける伝聞等も織り交ぜながら教学局局長が心魂込めて著した“宗忠伝の総集編”ともいえる本巻を、心読、熟読、そして繰り返し愛読していただいて、大明神という最高位の御神号まで公より賜った宗忠神の尊いお守りとお導きのおかげを、一人でも多くの方がお受けになることを願い祈っています。

 『立教二百年への道』は、日本人を教祖(その文字が示す通り“宗教の祖”)とする純日本国産の宗教教団が初めて迎えた200年の歴史を編年体で綴った“記録集”です。いわゆる学術書ではありませんが、長代和芳編纂委員長が史実に基づく客観性を常に配慮しながら綿密に教団史を調べて記述してくれました。ただし、積読(読まないで積んでおくこと)になっては申し訳ない先人・先輩方の信仰の証ですから、できるだけ読みやすい歴史書を目指して編纂されています。

 本巻を通じて読み取っていただける黒住教の特長の一つは、いつの時代も現実を肯定的に受け止め、常に社会に開かれた宗教教団であるということだと思います。閉鎖性や排他性や現実逃避性といった、ややもするとどの宗教教団も陥りがちな傾向をほとんど有しない本教の特質は、太陽、とりわけ昇る朝日に象徴される天照大御神を主宰神として崇め、森羅万象すべてを神々のはたらきと称える八百萬神信仰を尊重してきた、日本古来の神道の伝統をそのままに受け継いでいるからだと考えられます。「神道の教えの大元」と称されてきた黒住教二百年の歩みが、現代人の宗教に対する信頼回復のきっかけになり、安らぎと温もりを人々にもたらす“心の栄養”としての宗教本来の役割を果たせることを願っています。

 最後に、「神楽岡・宗忠神社ご鎮座百五十年記念祝祭」(平成24年)、「第六十二回伊勢神宮式年遷宮奉賛 お白石持行事」(同25年)、そして「立教二百年大祝祭」(同26年)、さらに「大元・宗忠神社ご鎮座百三十年記念祝祭」(本年)の動画記録他が納められたDVDが付属されますので、掛け替えのない“祭り年”の永久保存記録盤として家族・親族でご覧になっていただきたいと思います。