国際貢献トピア岡山構想のめざすもの
RNN(アールエヌエヌ)(人道援助宗教NGOネットワーク)の可能性⑤
平成24年11月号掲載
RNN(人道援助宗教NGOネットワーク)の特質の一つは、岡山という地域に根差していることです。「“ローカル・イニシアティブ(地方の主体性)”は、宗教協力や宗教対話の場においてこそ発揮されるべし」と信じて、私は、事務局長というRNNの世話役として、“ご近所付き合い”を基本にした“地元・岡山からの発信”を常に心掛けています。
有り難いことに、私は今までに幾つもの世界的な宗教会議に出席する機会をいただいてきました。大きな影響力をもった責任ある立場の宗教者・聖職者の方々が、宗教・宗派・教団を超えて共に世界の平和と安寧を真剣に祈り、かなり本音のレベルで意見交換が行われる場面を何度も目の当たりにして、諸宗教間の信頼構築が確かに進みつつあることを実感しています。ただ、「総論は賛成、されど各論は先送り」ということが多いのも事実で、克服されなければならない課題の多くは、それぞれの“身内”での合意形成と“地元”からの実践です。
宗教的な対立や紛争とは縁遠い日本古来の風土に恵まれているからとはいえ、私は国際的な舞台でRNNの活動事例を胸を張って紹介できることを誇りに思っています。活動の規模はささやかでも、“近所同士”が思いを共有して具体的な行動を企画・計画・実践し、メンバー各位が自分の事としてRNNという“ 神輿(みこし)”を担いでくれることを何よりも有り難く思っています。
実は、「単独で行動するよりも、RNNのプロジェクトとして活動する方が何かとやりやすい…」と、各メンバーが体験的に実感していて、RNNを積極的に活用しているのです。一般的に、「布教」という言葉の“負のイメージ”が独り歩きして、宗教教団が単独で活動をすると短絡的に“怪しい”とか“危険”だと思われがちであることに、世の多くの宗教者は共通して苦労をしています。幸いにして岡山の人々が黒住教に寄せて下さる信頼は抜群で、今述べた“苦労”を私たちが感じることはあまりありませんが、それでも一宗教法人として公共の場や教育の場で何かを行う際には制限があります。こうした問題が「長年、地元の宗教者が協力して人道援助活動を行ってきた」という事実によって軽減され、RNNとして行動すること、また私がRNN事務局長として発言することが一般に受け入れられやすい環境を提供してくれているのです。
一つの具体例として、今、岡山県内の幾つかの大学や高校から「RNNとして、宗教の講義をしてくれる講師を派遣してもらいたい」という依頼を受けています。世話役として私は、「神社神道、仏教、キリスト教、イスラーム、金光教、天理教、そして黒住教、さらには新宗教からでも、ご希望の講師を輪番で派遣することは可能」と回答していて、具体的な話が計画されている状況です。若い世代への宗教的情操教育の必要性は、関係者のみならず多くの人たちが認識していることですが、今後のRNNの可能性の大きな柱だと思っています。
現在、私は公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)理事兼総合企画委員、世界連邦日本宗教委員会副会長という、全国規模の宗教協力団体の要職を仰せつかっていますが、地元を拠(よ)り所にして地方から発信・行動する宗教ネットワークであるRNNの理念が、他の地域においても参考にされることを念願しています。
立教200年大祝祭まで、いよいよ1年と11カ月と近づいてきました。国内外、教団内外から揺るぎない信頼をいただくことのできる稀有(けう)な宗教として、世の中に対する黒住教のつとめは絶大なものだと信じます。お道づれの皆様、立教200年以降の本教の使命を果たすべく、ともに誠を尽くしてまいりましょう!