国際貢献トピア岡山構想のめざすもの

平成24年4月号掲載

 かつて、本稿に「トピアの会(国際貢献トピア岡山構想を推進する会)と歩んだ10年間」(平成16年3月号)と題して執筆したことがあります。「トピアの会」は、本教ともご縁の深い国連認定NGOのAMDA(アムダ)の菅波茂代表の呼び掛けに、岡山県内の民間国際ボランティア団体(NGO)の多くが賛同して平成6年に発足したNGOの連合体でした。会の発足当初から活動に参加していた私は、宗教をテーマにした「第3回 おかやま国際貢献NGOサミット」(平成8年11月開催)を機に、会の実質的な運営責任者である事務局長に就いて、平成11年から平成16年の解散時までは、菅波氏と共に副会長を務めていました。
 「民間による国際貢献活動の発信地・岡山」をめざした理念は、「ユートピア(理想郷)」から命名された会の名称からも想像できるように、いささか理想が先行しがちではありましたが、医療・教育・宗教・環境・福祉をテーマにした国際会議「おかやま国際貢献NGOサミット」を毎年開催して、確かな実績を重ねました。
 個人的には、“青年”と呼ばれる年齢の頃に国際的な行事に企画から実行まで主催者として携わり、国や県や市の行政担当者や各分野の研究者・専門家、また内外のNGO関係者との出会いにより、まことに有り難い経験を積ませていただきました。
 「トピアの会」が活動を終えて8年が経過しましたが、この間にAMDAは国際連合の経済社会理事会で政策提言を行える総合協議資格を平成18年に取得して、ますます世界にその存在感を示しています。また、岡山県は「国際貢献活動の推進に関する条例」(平成16年4月施行)を制定して、国際貢献を県政の柱の一つに掲げました。さらに、環境保全と教育をテーマにした「持続可能な開発のための教育(ESD)」の企画が「トピアの会」の主要メンバーによって継続して推進された結果、今や岡山市が「岡山ESDプロジェクト」として取り組むようになっています。
 実は、神道山に事務局を置いて実質的な取り運びを私が行っている「RNN(人道援助宗教NGOネットワーク)」は、「『トピアの会』という一般市民活動から誕生した諸宗教による連合体という点で、他に類を見ない存在」(菅波氏談)との評価を受けており、「国際貢献トピア岡山構想」の一翼を担わせてもらっているのです。
 この度、公(おおやけ)からの助成金や企業からの寄付、そして多くの人々の支えにより活動できた「トピアの会」の10年間の歩みを振り返りながら、発展的解散をした後の8年間の展開を顧みる、「国際貢献トピア岡山構想のめざすもの」と題した書籍の出版計画が持ち上がり、私が編集責任者を務めることになりました。今までの活動記録や写真他の資料を用いて、各分野で関わってきた方々に各章を担当していただく共同執筆ですが、全体を取りまとめるとなると結構な作業になろうかと思います。教団的にも立教二百年に向けた大切な時期ですが、宗教教団の副教主である私が、こうした公的な役を任されるのは、本教への信頼があればこそのことなので、しっかり務めたいと思っています。
 とりわけ、東日本大震災から一年が経(た)ち、AMDAと連携しながら諸宗教が協力して活動を展開しているRNNの「祈りに基づく行動と、行動を伴う祈り」の一端を、“宗教ばなれ”の進む現代の多くの人々に、特にお道づれ各位の後継者の方々に知っていただきたいと念願しています。