サウジアラビア国王主宰の国際シンポジウム
平成24年1月号掲載謹賀新年
昨年後半は、イタリア・アッシジで開かれたローマ法王主宰の「宗教者サミット」、そして神道山での「第33回世界連邦平和促進全国宗教者岡山大会」と、国内外での重要な“宗際行事”が続きました。実はもう一つ、私が出席した大事な会議について報告させていただきます。
昨年11月19日と20日に、東京都内にあるサウジアラビア王国国立イマーム大学東京分校の「アラブ イスラーム学院」で、アブドゥッラー国王が主宰する「対話を通じての平和構築」という国際シンポジウムが開かれ、私はパネリストとして出席しました。初日の19日は東京大教会所での「献茶ならびに吉備楽披露の会」の当日でしたから、私は20日だけ出席したのですが、予期せぬ“大役”が待っていました。
私がパネリストとして登壇したのは、「宗教対話による平和構築-イスラームと日本の文化的視点からの提案-」と題された部会でした。座長はイスラーム法が専門の奥田敦慶応義塾大学教授、パネリストはサウジアラビア王国イスラーム省官僚のアブドゥッラー・アルルハイダーン氏と私だけでした。まるで、私一人が日本の宗教を代表して臨んだようなパネルディスカッションであったということが、予期せぬ事の一つでした。それでも、事前の打ち合わせ通り、私が世話役をしている「RNN人道援助宗教NGOネットワーク」によるイスラームとの交流事例を報告して、やっと対話の席に就き始めた一神教(イスラーム)国に、八百万神の国の宗教対話と宗教協力の実践を「“ご教授”申し上げる」くらいのつもりで、割と気楽にしていました。ところが、直前の部会の「平和構築のための日本とサウジアラビアの共通理念の役割」のパネリストであった同志社大学のサミール・ヌーフ教授が、「神道の“清浄さ”を重んじる伝統や、家族や社会の絆を大切にする習慣はイスラームと共通。次の部会での、神道の黒住副教主からの提言が楽しみ」と発言して、それこそ私は思いがけない“大役”を突然任されたのでした。準備する時間など全くありませんでしたが、幸い同時通訳が手配されていた会議でしたから、急きょ内容を変更して、教祖神の御教えを元にした日本人の信仰・神道の話を中心に、与えられた時間の発言を行いました。その後も充実した宗教対話ができ、「日本の宗教文化を理解する上で、とても貴重なパネルディスカッションだった」とサミール教授をはじめ出席者各位からお礼を言われて、責任を果たせたことを感謝し、安堵したことです。
この会議を共同開催した同志社大学の小原克博教授が、ご自身のホームページにこの日の感想を書いておられましたので、ここに紹介させていただきます。
「サミール先生からは、日本の宗教、特に神道とイスラームとの親近性が紹介され、黒住教副教主の黒住宗道氏からは、多神教的でもあり一神教的でもある黒住教についての紹介がありました。黒住教は、太陽神・天照大御神への信仰を重視しています。今回、黒住氏とかなり密に話をすることができたのも、私にとっては大きな収穫でした。
黒住教は、19世紀前半に設立した、日本の新宗教の中で最古のものです。後に教派神道の中に分類されますが、多くの神道の流れが国家神道に統合されていく中で、それ以前の神道の姿を今に至るまで保持しているという特質をもっています。岡山が本部ですが、いずれお訪ねしたいと強く感じました。
サウジアラビアからの方々の多くは日本の宗教についての知識が十分ではありませんので、断片的とはいえ、日本宗教についての紹介の機会があったのは、とても良かったと思います。」
相次いだ国際舞台でのつとめの一端を報告いたしました。
本年も、よろしくお願いいたします。