宗教者の「祈り」と「行動」 ~東日本大震災に際して~
平成23年6月号掲載
この度の大震災に際して、RNN人道援助宗教NGOネットワークの事務局長として寄稿文を作成しましたので、以下に掲載いたします。一部、本稿前月号の文章を引用していることをご了承下さい。
未曽有の大惨事となった東日本大震災の犠牲者の御霊(みたま)の安寧と被災者すべての方々の平癒と回復、被災地の復興、そして福島第一原子力発電所の大事故の早期収束を心から祈念いたします。
天地自然の恐るべき威力の前に、ただただ言葉もありません。生命(いのち)を生かし育んでくれるのも自然の大いなるはたらきなら、その余りにも大きな力ゆえに、今回のような猛威と恐れおののかざるを得ない強烈な影響をもたらすのも自然だということを、言い訳無用に突き付けられた思いです。四季折々の生み出す豊かな恵みに感謝するとともに、火山列島・地震列島ならではの厳しさにひれ伏すような心で、わが国の先人たちは森羅万象のはたらきを八百萬神(やおよろずのかみ)と称(たた)え、そのすべての本たる太陽を天照大御神と崇(あが)めて、敬い、慎み、畏(かしこ)み(恐(かしこ)み・怖(かしこ)み)奉ってきた惟神(かむながら)の道が神道であることを、今さらながらに実感させられます。
地震発生直後、私たち黒住教では「東北地方太平洋沖地震被災者慰霊・復興祈願祝詞(のりと)」の作成を全教会所に緊急指示して同じ心で祈り続けることを徹底し、各教会所での義援金の募集を開始しました。同時に、事務局長として、RNNのメンバーとともに宗派・教団を超えた「祈り」と「行動」につとめました。
RNNは、「第3回おかやま国際貢献NGOサミット」(平成8年11月開催)を機に発足した、主に岡山県内の諸宗教(現在12の宗派・教団が加盟)による協働連合体です。宗教間対話と宗教協力による人道援助活動を共通基盤として、スタディーツアー、フォーラム、被災地復興支援、緊急救援、慰霊・復興・平和を祈るヒーリングコンサート(和奏会)等を行ってきました。特に内外災害時の緊急救援では、国連認定の医療NGOであるAMDA(アムダ)出動の際に必ず各メンバーの寺院・教会・教会所等の施設に募金箱の設置を呼び掛けて、迅速な活動を展開してきました。
東日本大震災に際しては、AMDA支援のための街頭募金を、3月13日から4月12日まで協働して行いました。震災直後の非常時の数日間から常時の生活が取り戻される“非被災地・岡山”の変化を日々肌で感じながら、「被災地への思い、被災者への真心」を街頭から願い続けました。それは、私たちにとって「祈り」そのものでした。
一方、メンバーの一人である真言宗僧侶がAMDAスタッフとして3月17日から10日間にわたって被災地(岩手県釜石市と同大槌町)に入りました。救援活動をサポートするとともに、津波による被災を奇跡的に免れた曹洞宗寺院の法要に参列して岡山のメンバーと時刻を併せて祈りを捧(ささ)げ、それが縁で同寺院住職から依頼を受けて、複数の遺体安置所で読経して物故者の冥福を祈りました。
そして、3・11から50日目の4月29日、有志による「RNN慰霊祭」を執行しました。黒住教本部神道山の日拝所において、現地報告と黙祷(もくとう)、そして真言宗・金光教・カトリック・天台宗・黒住教による祈りが、順次厳かに捧げられました。同じ頃、メンバーの日蓮宗僧侶が宮城県石巻市の神社境内で、宮司と金光教の教会長と共に慰霊祭をつとめました。
今後も、共通の思いを分かち合える仲間たちと共に、「祈りに基づく行動」と「行動を伴う祈り」に心掛ける宗教者でありたいと願っています。