「おもしろラジオ講座」②
平成22年8月号掲載
副教主様には、去る5月3日午後10時から放送された「アンクル岩根のおもしろラジオ講座」(山陽放送ラジオ:本社岡山市)に出演して、様々(さまざま)な話題を持ち前の明るい口調で語られました。元山陽放送アナウンサーで現山陽学園大学客員教授のアンクル岩根こと岩根宏行氏と、岡山の地域月刊誌オセラ編集長の中山美香女史とのトーク(対話)の要旨を先月に続いて紹介させていただきます。 (編集部)
岩根: 今も世界では戦争や紛争が絶えないわけですから、それについて宗教者がどういうメッセージを訴えられるか、もちろんすぐに戦争をやめてもらうというわけにもいかないのでしょうが、「政治家よ、いい加減にせい!」というようなことが言える宗教者はものすごく大事なポジションにいると思います。その辺はどうなんでしょうね。
黒住: 仰(おっ)しゃる通り、海外の多くの国では政治家に与える宗教者の発言力は実に大きい ものがあります。ただ、「一回集まって祈って話をしたら、仲直りができて平和になりました」というように単純なものではもちろんありませんから、諸宗教が協力して何ができるかを常に模索するしかありません。例えば、他の宗教を認めない宗教指導者に、仮に私が「あなたもわたしも同じ宗教者」と言って握手を求めても受け入れられるはずはありません。でも、彼らと同じ経典を読み、同じ神の名の下(もと)に祈りを捧(ささ)げている寛容な指導者たちもいるわけで、たとえ「堕落している」と原理主義者から非難・攻撃されようとも、命懸けで他者を理解することの大切さを説得する勇敢な寛容派がいる限り、彼らを“ひとりぼっち”にするわけにはいきません。
岩根: 宗教者が集まった時に、相互の信頼があるのかどうか、あるいは逆に疑いがあるのかどうか、その辺はどうなんでしょう。
黒住: 本当に信頼し合っているかどうかは、正直なところ分かりませんが、諸宗教が集う会合に出て、ともに平和の祈りを捧げる宗教指導者たちは、少なくともお互いに分かり合おうとはしています。意見交換の場で批判の応酬などもあり、結構厳しい議論になったりもしますが、それは健全な証拠だと思っています。
岩根: 確かに、そうですね。批判ができるということは、そこでコミュニケーションが取れるようになっているわけですから。
中山: ところで、オバマさんは米国の大統領として初めて核兵器を廃絶しようとしていますね。
黒住: はい、画期的なことですね。
岩根: ちょうど、きょうから「NPT核拡散防止条約」の再検討会議が国連で開かれるそうですね。
黒住: 5年に1回行われる核兵器の廃絶と拡散防止の国連会議です。前回の会議は米国の同時多発テロ直後ということもあって結果的に決裂し、今回は決して失敗が許されないと言われている会議です。私は専門家ではありませんが、2年前にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で行われた準備会議に、世界で唯一の被爆国である日本の宗教者の代表として出席して発言させていただいたものですから、今回の会議の行く末には一層大きな関心を寄せています。
岩根: 温暖化の問題も含めて、地球そのもののことを考えて、宗教者の方からメッセージを発し続けてほしいですね。
中山: 祈りが基本にあるけれども祈りだけではない、宗教家ならではのコミット(意志決定)の仕方というものが絶対あると思います。他の方にはできないことなので、どうぞ頑張っていただきたいと思います。
岩根: ところで、この前の4月25日の山陽新聞に「よく生きること、よく死ぬこと」と題した 「鼎談(ていだん)」が載っていました。興味深く読みましたが、その時、黒住教教主様と株式会社いのうえの井上社長さんと、山陽新聞社の越宗社長さんのお話でした。とりわけ、墓や葬式の無用論などについて話されていて…。
中山: お墓はいらないっていうことですか?
岩根: そう…。最近いろんな本が出ているじゃないですか。教主様の回答が印象的でした。
黒住: はい、「いのちは肉体の死をもって、終わるものではない」という死生観は、何々の宗教を信じているからとかという次元の話ではない、日本の長い歴史の中で人々が自然と培い受け継いできた伝統であり文化。そういうものがあまりにも軽んじられてきたのが、戦後の時代で、同時進行・同時並行で、加速度を増す都市化の影響で、親元、故郷を離れて都市へ人口が集中して家族がばらばらになっている。それが、個化、または核家族化、そして無縁社会にもつながってきています。さらに同時進行で、物質中心の感覚がとどまるところを知りません。結果的に、死んだのだから終わりでいいじゃないか、個人の考えなんだから…というわけですね。信仰する者からすると、それはちょっと違うのではないかと思います。
岩根: 教主様のご指摘、なるほどと思いました。魂ということを仰しゃっていましたが、魂は目に見えない。だから、人が亡くなったらもうそれでおしまいということになりがち。だから葬式もしないで散骨などをする。今までそのようなこと考えたことがなかったのですが、最近、特に葬儀のことについてすごく興味があるものですから…。きょうは、いろいろな話題について、楽しくお話を伺わせていただきました。有り難うございました。
黒住: こちらこそ、有り難うございました。
(完)