万国宗教会議メルボルン大会に出席して①
平成22年2月号掲載
本誌別掲の通り、昨年12月にオーストラリア・メルボルンにおいて開催された第5回万国宗教会議に、私は主催者からの要請を受けて出席しました。第1回大会からちょうど百年後の1993年に、同じ米国・シカゴの同じ会場で開かれた第2回大会以降、1999年の南アフリカ共和国・ケープタウンでの第3回大会、2004年のスペイン・バルセロナでの第4回大会と、いずれもの大会に招聘(しょうへい)を受けた日本の宗教教団は本教だけです。今回も、日本の神道について本教の教えを元に講義を行い、平和の祈り(日拝式)をつとめました。
「どうせなら、1893年の人類史上初のシカゴ大会にも出席したかった…」と言って雰囲気を和ませてから始めた今回の講義は、極力“外国人”の受講者が「納得して、理解できる」ように、過去の発表原稿を改めて吟味・推敲(すいこう)して臨みましたので、今までで最も手応(てごた)えのある話ができたように思います。基本的には、前回のバルセロナ大会の講演録「『誠』の教え-神道による平和への道-」(日新社刊)を手直ししたものですから、今後和訳して本稿で紹介する予定はありませんが、
「Challenge of Shinto : An Approach to Living Togetherin Diversity」(翻訳すると「神道の挑(チャレンジ)戦:多様性の中の共生への道(アプローチ)」)という、日本語ではいささか直接的すぎる演題からも察していただけるように、できるだけ彼らの視点でアプローチした私なりのチャレンジでした。英語による原文は、近々ホームページ上で公開しますので、関心のある方はご覧いただければと思います。
講義後と日拝式後に行った質疑応答も充実した時間になりましたので、その一部を紹介しておきたいと思います。
Q.八百萬神(やおよろずのかみ)は、普遍的という意味ですか?
A.森羅万象、すべてに神のはたらきが顕現しているという信仰ですから、普遍的と理解していただいて結構です。
Q.神道と仏教の関係は…?
A.神仏習合の伝統が培われてきた日本社会では、今も神道と仏教は、いわば役割分担して人々の信仰生活の中に共存しています。異なる宗教ではありますが、日本人にとって両者を受け入れることに違和感はなく、これも神道の大らかさによるものと考えられます。
Q.女性神官の存在は?
A.神社神道でも黒住教でも多くの女性神官が日々神事をつとめています。
Q.神道の立場から地球温暖化への提言を…。
A.そもそも自然への畏敬(いけい)の念に始まる神道にとって、地球環境の破壊は、厳しい言い方をすれば“神への冒涜(ぼうとく)”です。天照大御神、八百萬神への信仰の実践として、私たち現代人は深く反省して生活態度を改めなければなりません。鎮守の杜(もり)を守り、「おかげさま」の心で何事にも感謝して謙虚に生きる神道のメッセージが、温暖化防止に活(い)かされることを願います。今や大都会東京に息づく完全な自然林である明治神宮の杜が百年前に植林された人工林であることは、環境問題の観点からも良き実例として広く世界に知らされるべきだと思います。で、関心のある方はご覧いただければと思います。
Q.柏手(二拍手)の意味は…?
A.事細かな意味づけがなされない点が神道の特徴なので、実は正確な意味は私も知らないのですが、次のように理解できるかと思います。まず、何か物を持っていると拍手はできません。また、歓喜の表現として拍手するのは万国共通です。そして、誰(だれ)かに気付いてもらいたい時や、物事のけじめに日本人は手をたたきます。勝手な解釈ですが、邪心なく無心に喜びを表して、自分が参っていることを神様に知らせて、祈りの最初と最後に手をたたくのではないかと…。いずれにしても、礼儀礼節を重んじて厳粛に祈りを捧(ささ)げる行為であると思って下さい。
その他、「神戸という地名は、神道と関係がありますか?」とか、「太鼓は神道にとって宗教的な意味がありますか?」等の思いもかけない質問に驚かされることもありましたが、楽しくも有意義な意見交換ができました。 (以下次号)