世の中はみな丸事のうちなれば
ともに祈らんもとの心を(御歌二〇二号)

 この御歌は「世の中はみな丸事のうちなればともに」の後に大きな円が書かれていて、その円の中心に「天照大御神」、その右手に「君は東に」、左手に「我は吉備にて」、そして円の真ん中に「天照大御神」と重なって朱色で「心」と記され、東(江戸)の門人と教祖神とを結ぶように横線が引かれています。円の上には「祈らん」と横書きで、円の左下には「もとの心を」と認められています。また、その円の中の左下に小さな○、「もとの心を」との下の句に向かって円の輪郭の線上に○、さらに円の外に○と、小さな丸が三つ並んで書かれています。(『黒住教教書』または『黒住教教典抄』をご覧下さい)

 また後付として「日々祈り奉り候心の姿をまた心にうかみ候間、お餞別にさしあげ申し候。めでたし、めでたし」が記されていて、参勤交代で江戸詰となる門人にお餞別として贈られたことが分かります。

 この御歌は「世の中はみな丸事、すなわち天照大御神の御懐の中なので、共にその元の心である大御神様からいただいたご分心(わけみたま)を大切にし、一緒に祈り合いましょう」という意味です。ですから、円の中心の「天照大御神」の所に朱色で「心」を書かれたと拝察します。また、「もとの心」を知らないで、大御神様の御懐から徐々に離れて行くありさまを三つの小さな丸で表されたものと伺います。教祖神の実に心温まる親ごころと、道味あふれるお餞別といえます。

 なお最後に「めでたし、めでたし」とありますのは、当時、江戸詰になる武士には皆で「おめでたい」と祝福していたからです。

 昨年の本欄で学んできましたように、「丸事(まること)」とは、世の中(天地自然)が〝丸い状態〟で〝丸いはたらき〟であることを意味しています。丸い状態は調和の取れた状態で「完全調和(大調和)」といえます。また、丸いはたらきは、どのような動きや働き掛けも決して一方通行ではなく、直接または間接的に返ってくる双方向性の「循環作用」です。

 そして「もとの心」を共に祈り、ひたすら誠を尽くすとき、ご分心を通じて「共鳴作用」といえるご神徳の「広がり(おかげ)」を誰しもがいただけるのです。