天つちの中に照り行く御(み)宝を
今ぞ取りえし心楽しき(御歌21号)
平成26年11月号掲載
200年前、「天命直授(てんめいじきじゅ)」という尊き宗教的神秘体験を通して天照大御神との不二(ふに)一体を確信された教祖宗忠神は、その後数日間笑い続けられたと伝えられています。
立教二百年を迎えた本教に「黒住教教祖の精神と現代社会」と題して一文を寄せて下さった國學院(こくがくいん)大學の井上順孝教授は、この逸話(いつわ)を紹介して次のように述べられました。
「宗教者の回心体験と呼ばれるものは数多くある。しかしその境地が徹底した笑いで表現されるというのは珍しい。いかにも開放的で、陽気で、伸びやかである。(中略)そうした教祖の人柄は、多くの弟子たち、信者たちにまるでミーム(文化的遺伝子)のように、受け継がれているのではないかと感じることがある。私がお会いした黒住教の方々は、たいていが気さくで陽気な方である。陽気でほがらかな心をつねに保てるというのは、宗教にとって一つの重要なポイントに思える。(中略)国内で宗教が関係した事件が少なくなく、世界では宗教テロが頻発している。このような社会状況のなかで、陽気さ、開放性をもって人々に教えを説き、生き様を示した教祖の理念はどのように活(い)かされるべきなのだろうか。他の宗教とは異なる黒住教の独創的な面は、もっと強調されるべき時代に思える。(中略)人と人が互いに信頼できるような社会を目指すには、地域社会における日常的な努力がもっと基本となるであろう。黒住教にはそうした面での貢献を期待したい。教祖の精神を大事にするなら、必然的にそうならざるを得ないと思うからである。(中略)教祖の願いを教団として実現しようとする動きが、さらに積極的に展開されることを願っている」
立教三世紀に突入する本教に、現代社会への働き掛けを期待を込めて示して下さった井上教授のメッセージから、今こそ教祖神の御(み)心を我が心として、一層世のため人のために道の誠を尽くすことの大切さを再確認させていただく思いです。
今月の御教えは、「天命直授」の感激のみを詠まれた御神詠というよりも、御日拝のたびに毎朝その確信を深められた教祖神の御歌と学ばせていただくことによって、私たちが常に純粋な憧れをもって目指すべき教祖神の尊き御心だと思います。感動と感謝こそ黒住教信仰の真骨頂です。喜び勇んで、この道を歩んでまいりましょう!