腹立てな物を苦にすな悪もすな
     天の恵みで福徳をます(伝御神詠)

平成24年5月号掲載

 「教えのお歌をへその裏へ貼れよ」と題された御逸話(ごいつわ)の中で、教祖宗忠様が詠まれた御歌として知られるのが今月の御教えです。

 教祖様ご在世中、家の開運を願った某家の主人が、教祖様を招いてお説教を拝聴して大変感激し、「お話の中で詠まれた御歌を書いていただきたい」と願い出たことがありました。教祖様は快諾して、短冊型の十数枚の半紙に、この御歌ばかりを認(したた)められました。「ほかの御歌も…」と言う主人に、「この紙を家中に貼って、『腹立てな』『物を苦にすな』『悪もすな』と専心してつとめなさい」と、懇ろにご指導下さった教祖様のお言葉を受けて、部屋という部屋に紙を貼ってきた主人が一枚残った紙を返そうとした時、教祖様のお口から発せられたのが、「その一枚は、あなたのへその裏に貼っておきなさい!」の一言でした。
 御教えを腹(身)におさめる大切が示された御逸話ですが、「御訓誡七カ条」の第二条「腹を立て物を苦にする事 恐るべし恐るべし」と第四条「人の悪を見て己れに悪心をます事 恐るべし恐るべし」の徹底をご指導下さった事例として、心して学んでおく必要があります。

 本稿を通じて繰り返して学んできたのは、天照大御神のご分心(神の心・心の神)のご座所であるわが心をいかにお養いするか、すなわち「心の活(い)かし方、直し方、用い方」です。前回に学んだ「我(われ)(我欲・我執)」が起因して心という空に生じる雲や霧を祓い清めて、ご分心という“お日様”の御光(みひかり)をしっかりいただくことが御教えに適った生き方にもかかわらず、何かと自分の中で言い訳をして心の祓いに徹せられないのが私たちです。その言い訳の最たるものが、「自分は腹が立ちやすい性分だから…」と「くよくよしがちなのは自分の性格だから…」ではないでしょうか? そして、「ほかの人も同じだから…」と、悪いことと知りながら直そうとしない自分への甘さではないかと思います。

 心直しが簡単にできるはずもないですが、常に心掛けることの大切さを、教祖様は御教え下さっているのです。