第二回東京平和円卓会議
教主 黒住宗道
私たちは毎朝日の出を拝んで、世界の平和と万民の和楽を祈っています。
一切万物を生み育てる至高の存在の尊きはたらきの顕現が、この地球上では太陽のもたらす生々発展の御恵みだと信じるからです。
言うまでもないことですが、太陽の光と熱は、地球上の全ての存在に分け隔てなく降り注がれます。
生きとし生ける全ての生命は、尊き御恵みの下に生かされて生きている賜物です。
実に単純で純粋すぎることを十分承知で申し上げますが、いかなる理由があろうとも「人間同士が殺し合ってはいけない」「人を殺してはならない」と、私たち宗教者こそが命がけで発言しなくてはならないと信じます。
この会合が、「問題解決の最終手段を殺戮行為に頼らない道」を模索する掛け替えのない一歩になりますように、心から祈ります。
去る二月十九日から二十一日までの三日間、世界宗教者平和会議(WCRP)国際委員会、同日本委員会、国際連合文明の同盟(UNAOC)の主催で「第二回東京平和円卓会議」が都内のホテルを会場に開かれ、紛争地域の宗教指導者ら、十六カ国約百名が集まりました。私は開会式での平和の祈りを、二年前の第一回会議と同様に日本の宗教者を代表してつとめました。まず祓詞を奏上して、次に教祖神御神詠を四首奉唱*の後、英語と日本語で読み上げたメッセージが冒頭の文章です。最後に御開運の祈りを唱えて役目を果たしました。
激しい戦闘下にあるウクライナとパレスチナから、敵対する両陣営に関わる宗教指導者が、個人資格ではなく各所属組織から公的に派遣されて出席したこと、とりわけロシア政府と密接な関係にあるロシア正教会の代表が和解のための会議であることを承知の上で前回に続いて出席したこと、一方でウクライナ政府と軍が会議の目的を承認して渡航制限下にもかかわらず今回も正式代表の出席を許可したことは、何はさておき特筆されるべきことでした。
とは申せ、正式代表ということは公の立場からの発言ばかりですから、対峙している双方の意見は完全なすれ違いで、議論による現状打開や平和構築が図られることは到底期待できませんでした。そもそも宗教者による会議ですから、政治的発言による非難の応酬ではなく、戦争、暴力、殺戮行為に対して強く異議を唱え、全ての人間の尊厳を守ること、老人や女性や子供など弱い立場にある人々の人道支援を実施すること、和解に向けた女性や若者による交流事業を実施することなどを盛り込んだ声明文の採択を目指して会議は進められました。
二日目は都内の宗教施設(日枝神社と増上寺ほか)を巡りましたが、初日と最終日の冷たい雨とは打って変わって、この日だけ摂氏二十三度の日本晴れという春の陽気に恵まれ、一同は「正に神仏の御計らい!」と喜んで、海外参加者たちの表情も自然と緩みました。
最終日、休憩の時間に相対する人たちが真剣に話し合っている姿を見て感動した私は、分科会で次のような発言をしました。
「第一回会議で継続開催が総意で決定されて、このたび第二回会議が開催できました。初回は実現できただけで奇跡的だと思いましたが、今回も含めてこれからは開催だけでは成果とは言い難く、『和解に向けて何が成されたか…』が当然のことながら重要になります。先ほど、私は相対する方々が非公式に真剣に語り合っている姿を目の当たりにして感動しました。こうした対話の積み重ねが何よりも大切だと思います。そして、会議中に『何が成されたか…』というよりも、この場で共有された課題を持ち帰って、実践なさったことを次回に知らせていただきたいと思います。『残念ながら、思ったようにいかなかった…』とか『危険な目に遭った…』という報告の方が多いかもしれませんが、私たち日本の宗教者は常に皆様方の側にいます。この会議の継続が、和解に向けた実践の実績になりますように、切に願っています」
この、同時通訳のおかげでしっかりと思うところが述べられた私の発言は、声明文の採択に際して日本委員会の事務局長が総括した全大会の報告の中でも紹介され、会議終了後にパレスチナとハイチ、コロンビアの代表者がわざわざ握手をしに来てくれました。世界各地の戦禍の厳しい現実を知ると胸が痛みますが、命懸けで和解に向けて取り組んでいる方々の努力に神仏のご加護がありますように…。
謹みて天照大御神の御開運を祈り奉る。併せて
ウクライナ、パレスチナ・ガザ地域の戦禍をはじめ各地各所の戦場における殺戮行為の速やかなる終結を祈り奉る。
*平和の祈りとして奉唱した御神詠
世の中はみな丸事のうちなれば ともに祈らんもとの心を
まるき中に丸き心をもつ人は かぎりしられぬ○き中なり
誠ほど世にありがたきものはなし 誠一つで四海兄弟
天照らす神の御徳は天つちに みちてかけなき恵みなるかな