挨拶(あいさつ)いろいろ
平成16年5月号掲載
教主様は、教内はもとより社会一般からの要請でご挨拶を次々とつとめられています。
今号の「道ごころ」には、最近おつとめになったご挨拶の要旨を掲載いたします。(編集部)
御神幸(ごしんこう)を終えて 四月四日
皆様、有り難うございました。あいにくのお天気、雨そぼ降り寒さも加わった中で、皆様は奉仕の誠を貫いて下さいました。ご存じのように今年は立教百九十年・神道山ご遷座三十年の記念の年の宗忠神社御神幸。このとき、本教の神髄を皆様は身をもって示して下さいました。表町(市内の繁華街)を進んでいますとき、私の友人が声をかけて来ました。
「さすが、黒住教!」と称えてくれました。人の心の真実は厳しいときにそのままに現れるものです。皆様は有り難い道の誠をお示し下さいました。来年は、当宗忠神社のご鎮座百二十年の御神幸です。きょう奉仕の皆様は来年もぜひおかげをいただいて下さい。(拍手)
おおもと病院山本泰久(やすひさ)院長の山陽新聞賞受賞祝賀会、祝辞 二月二十八日
三十年近く前、私どもの大元の宗忠神社、それは古来、大元神社とも呼ばれている神社ですが、ここに程近い所にその名も“おおもと病院”が開院しました。院長の山本泰久先生は、ご丁寧なご挨拶状とともに部厚い漢方医学の本をお届け下さいました。外科のしかも乳ガン手術の名医の泰久先生が、なぜ漢方医学なのか、分からないまま時が過ぎていきました。その内、漢方薬も保険でいただけるようになり、しかもこの頃はアメリカのアリゾナですか、医大の先生が中心となって“(注1)統合医学”というのですか、要は西洋医学と漢方など各地の伝統医学との統合をはかって、患者の持つ“治す力”を引き出そうとしていることが、医学に素人(しろうと)の私たちの耳にさえ入って来る時代になってきました。
これは何も新しいことではなくて、おおもと病院の山本院長は三十年も前から取り組んでいらしたわけで、先生のその先見性に改めて敬服すると同時に、医学、医療の最先端岡山のリーダーとして、ますます新しい道を切り開いて行っていただきたく願い祈ることであります。
福本章(しょう)画伯の渡仏歓送会、送別の辞 二月二十八日
先ほど山陽新聞の内藤文化部長が、福本さんの絵画は光だと言われましたが、先生独特のあのうす紫色に包まれたお作品は、まさに光の絵画だと思います。私どもは日拝と言って毎朝、昇る日の出を待ちながら拝(おろが)みますが、今朝もそうでしたが、これから春がやって来ようとするこの頃には、お日の出前の東天は一面うす紫色に染まります。実に荘厳なときです。福本先生、かつて(注2)藤田嗣治(つぐじ)が乳白色でもってパリの人の心を掴(つか)んだように、どうかこのうす紫の神秘でもってパリを席巻(せっけん)されることを祈って送別の辞といたします。
陶芸家児島塊太郎(かいたろう)氏の山陽新聞賞受賞祝賀会、祝辞 三月二十四日
於 大原美術館(倉敷市)
エル・グレコの名画を背にこうしてご挨拶申し上げること、まことに光栄に存じます。しかもキリスト誕生の「(注3)受胎告知」の図です。これは、キリスト教、クロス(十字架)の最たるもので、私はクロスミ(笑い)。“クロス”のご縁でお許しいただきたく存じますが、山陽新聞賞受賞をお祝いする会が毎年いくつか開かれますが、このように大原美術館で泰西(たいせい)名画に囲まれての会などないことで、それはいつに大原理事長の御祖父孫三郎大人(うし)、そして塊太郎さんの御祖父虎次郎大人の深い“クロス”、交(まじ)わりが生んだもので、この日この時はまことに尊いことだと思います。
私は、きょうもご出席の(注4)藤原敬介(きょうすけ)さん申扶子(のぶこ)さんお二人の結婚の媒酌人をその昔につとめていまして、申扶子さんの妹さんが塊太郎夫人です。しかも、塊太郎さんの叔父上の児島直平(なおへい)という山陽新聞の学芸部OBの方に、若い頃に目をかけていただきまして、絵画などのものの見方、さらには文章作法など教えてもらったことでした。そういうことで塊太郎さんとはまさに人と人とがクロスする、つながりの中に今日に至っているものです。
それにしましても塊太郎さん、いや陶芸家としての塊太郎先生には、こういう恵まれた人脈の中で努めて来られてのこの度のご受賞、まことにおめでたく改めてお祝い申し上げますとともに、ますますのご精励をお祈りいたします。そのお作品は、なにか人の心をほっとさせ、和なごませる雰囲気にみちていまして、きょうも京都からご出席の私どもの信者の伊庭いば女史などは先生の大ファンでして、先生のお作品をそばに置くことで心が安やすんじると言っています。芸術家として御祖父の歩まれた道をたどりつつ、新たな世界を切り開いていかれることを祈ってお祝いの言葉といたします。
賢き人、美しき作品─大倉道昌(みちまさ) 於 天満屋岡山店美術ギャラリー
これは私の勝手な見方かもしれませんが、利口(りこう)と賢さとは違うように、きれいと美しいとは異なると思います。この観を深くしたのは、大倉さんを知ってからでした。
大倉さんは利口な人ではなく、本当の賢い人だと思います。長いパリ生活の中では、ご自身も驚くほどの母国を想(おも)う強い心から、身を捨てた行動をとられたこともあったようです。そのお作品は、きれいなと言うと失礼なほどの深みと静謐(せいひつ)さに満ちていて、そこには大倉さんの人となりが滲(にじ)み出ています。
美しいものというのは、こういう絵画のことをいうのだと、いつもそのお作品の前で釘づけになることです。
注1 統合医学
一九九六年、アンドルー・ワイル博士によって、アメリカ・アリゾナ大学医学部に統合医学研究課程が設置された。
注2 藤田嗣治
藤田嗣治(一八八六~一九六八)は世界的な画家として今に名高い日本人画家で、フランスのパリで活躍した。
注3 受胎告知
スペインの画家エル・グレコ(一五四一~一六一四)作の「受胎告知」は、世界的にも価値ある絵画で大原美術館の代表的名画。大原美術館は一九三〇年(昭和五)創立のわが国初の本格的西洋美術館。実業家大原孫三郎氏が画家児島虎次郎氏に命じて、当時のヨーロッパで泰西名画を収集させてできたもの。
注4 藤原敬介さん
備前焼作家人間国宝藤原啓氏の次男で陶芸家。大教殿の千木鰹木(ちぎかつおぎ)棟瓦制作献納の藤原建氏の従弟。
