“家族伊勢まいり”の成功を祈って 

平成13年7月号掲載

来る八月十八日から十九日にかけて、その名も“家族伊勢まいり”と題したお伊勢様への団体参拝が行われます。これは素晴らしい企画で、新しい「告諭」でもって親子はもとより先祖と子孫、先輩と後輩など、人間関係のタテ軸の大切さを改めて訴えさせていただいている私としますと、心から賛意を表しますとともに、その無事、成功をお祈りすることです。
 核家族化された家庭が多い今日の世の中ですが、それにもまして心配なのは、家族の中でも親子の絆が危ういものになってきている家庭の多い現実です。それぞれが自分の生活に忙しいということもありますが、個性、自主性を尊ぶという美名のもとに、各人があまりに自己中心的な、いわば身勝手なわがままなともいえる生き方に流れてしまい、夫婦、親子がお互いをおもんぱかり、おもいやる心の豊かさが育っていないところがふえています。人間、お互いに話し合うことも大切ですが、家族は他人の集まりではないだけにそれ以上に大切なことは、共に食事をするとか、一緒に風呂に入るとか、さらには共に御神前に額(ぬか)ずくとか、とにかく共に同じ行為を重ねる時をどれだけ持つかということです。この時間が、家族の絆を強め育(はぐく)んでくれるものであることを疎(うと)んじている人が多いのではないかと危惧(きぐ)いたします。
 この度の“家族伊勢まいり”は、このような世の中にあって、人として日本人として本当に大切なことは何であるかを体験すると同時に、その大切さを身をもって世に示す絶好のチャンスでもあります。


 ここに改めて記すまでもないことかもしれませんが、伊勢神宮と本教とのご縁は古く、それは教祖宗忠神にさかのぼります。
 ご生涯六度もの参宮、それは一カ月もかかるお参りを六度も果たしていらっしゃる教祖神です。その御歌に
 神風や伊勢とこことはへだつれど心は宮の内にこそあれ
とあります。「ここ」岡山と伊勢とは遠く離れてはいるが、わが心は「宮の内」神宮の大御前に額ずいた心そのままにある私である……と、まるで恋こがれるようなお伊勢様への熱いお心が脈づいている御神詠です。天照大御神、それは天地の親神であると同時に、わが日の本つ国の元なる大御神様。この大御神様への燃えるような熱いご信仰が教祖神のご一生を貫いたものです。
 その御手振りにならい二代宗信様の時代、それは江戸時代の最末期でしたが「伊勢千人まいり」がなされています。この時、教祖神の御教えを聞いた、今に国学者として名高い外宮の神官足代弘訓師は「神道の大元はここ伊勢だが、教えの大元は備前の中野なり」とのひとことでもっておたたえ下さいました。
 先輩方は大感激の中に、教祖神ご降誕の地、ご立教の地である備前の中野を「大元」と呼び始められました。
 明治の時代になり、新政府の下で苦労に苦労を重ねた三代宗篤様を中心とした先輩方は、明治十八年、その大元に宗忠神社ご鎮座という大聖業を成し遂げられました。この喜びを奉告申し上げるべく斎行されたのが「神宮一萬人まいり」でした。明治二十一年の第一回を皮切りに、この一萬人まいりは明治四十年まで五回くり広げられました。伝え聞いた話で思い出してもほほえましい思いにひたりますことは、この第五回目の一萬人まいりの時に、父五代様は一歳と数カ月で、神宮の玉砂利を進む時、初めて歩かれ始められたとのことです。ということは、四代様はまさに“家族伊勢まいり”を実践なさっていたということです。
 以後、ほぼ毎年伊勢団参は続けられてきましたが、私自身が父五代様に連れられてお参りしたのは昭和十七年でした。
 学校を終えて教団に帰ってからの私の参宮は、毎年正月過ぎ、貸切りの夜行列車にゆられながら五代様を先頭にした皆様とのそれはそれは楽しいものでした。



 昭和四十九年四月、その前年に二十年毎に御正宮(ごしょうぐう)からすべてを造り替える第六十回の式年遷宮を終えられた神宮から、本教は大量の檜(ひのき)の御神木を頂戴いたしました。それは二十年間内宮(ないくう)御正宮であったもので、折から神道山・大教殿を新しく造営中の本教にとってまことに有り難いきわみで、おかげで御神殿の御内陣部分はすべてこの御神木でしつらえることができました。
 その年の秋、長年に亘って教団を挙げてつとめてきた新しい霊地神道山への大教殿ご遷座は成りました。そして昭和五十五年の教祖神ご降誕二百年の新春、私たちは昭和の時代初めての「伊勢萬人まいり」を挙行しました。晴れやかに感動の一〇八八八名の参拝者の中には、いく百組かの親子、祖父母と孫といった“家族伊勢まいり”の方々もあられたことと思います。
 とりわけ、昭和五十九年、神道山時代を歩み始めて十年の歳月を有り難く積み重ねることのできた本教は、すでに第六十一回の式年遷宮の準備をとり進められていたお伊勢様に、「神恩報賽」の思いを込めて、かねてつとめています「ありがとうございます運動」を通じてご奉賛申し上げることを始めました。おかげで毎年多額の浄財をお供えさせていただくことができましたし、御神木の巨大な木曽檜を運び込む「お木曳き行事」に千名を超えるお道づれの皆様が参加、また御正宮の斎庭(ゆにわ)に敷きつめる「お白石持ち行事」にも数百名が参加させていただくことができました。
 平成六年新春、その前年に式年遷宮なった新宮(にいみや)に、平成の時代初めての萬人まいりのおかげをいただいたのも昨日のことのように思い出されます。さらにはその年の夏、この度の「家族伊勢まいり」と同じように青年連盟主催になる「こども伊勢千人まいり」がとり行われたことも記憶に新しいところです。


 この度の“家族伊勢まいり”は、このような伝統の上に立って、今日の世にまたとない時を世代を超えて共有できるまことに尊い行事です。年輩者である私たちおとなが、子供に与える最高のプレゼント、最良の教育の場でもあります。
 どうぞ率先しておつとめになるお道づれの一人でも多からんことを祈ることです。