黒住教の文化活動について紹介します。黒住教は文化・芸術方面にも通じていて、多岐にわたる活動を行っています。黒住教本部へお立ち寄りの際は、これらの資料や芸術品を展示している「宝物館・まることセンター」へぜひご来館ください。

昭和25年(1950年)、「教祖神100年大祭」を機に、岡山市内の実業家を中心に宗忠神社奉賛会が結成されました。この宗忠神社奉賛会の主催のもと、茶道表千家家元・千宗左氏を迎えての献茶祭が執り行われました。それ以来、神道山大教殿にて、表千家・裏千家・速水・藪之内・武者小路千家の5流派の家元が持ち回りで奉仕される献茶祭が毎年催されています。
 平成25年10月26日には、大教殿にて、武者小路千家官休会全国大会岡山大会献茶式が執り行なわれました。この日は全国各地から、千宗守宗匠、千宗屋若宗匠をはじめ官休会関係者400余名が参列参拝しました。
 なお宗忠神社奉賛会の発足に際して、当時の日本画壇の第一線の方たちの協力を得て、日本画の展示即売会を開きました。このときの浄財などが元になり、戦争によって途絶えていた「宗忠神社御神幸」が昭和27年(1952年)に復活しました。

昭和25年(1950年)の日本画展示即売会、昭和40年(1965年)の重障児運動におけるチャリティーセールなどが機縁となり、様々な分野における芸術家の方たちとの交流が5代・6代教主を中心に生まれました。昭和55年(1980年)に「教祖神ご降誕200年祝祭」を記念し、ニュージーランド・クライストチャーチ市のカンタベリー博物館に、人間国宝の方をはじめ50名におよぶ陶芸家の方たちによる「日本現代陶芸代表作品」を寄贈しました。これらの作品は、当時の総理大臣・大平正芳氏のニュージーランド訪問に際してカンタベリー博物館へと届けられました。
 翌年の昭和56年(1981年)には、オーストラリア・シドニー市のニューサウスウェールズ州立美術館へ、再び芸術家の方たちのご好意によって36点の陶芸作品を寄贈することができました。その後も機会があるごとに黒住教を通して作品を追加し、平成26年(2014年)現在、同美術館には63点の陶芸作品が贈られています。
 さらに昭和63年(1988年)、アメリカ・フロリダ州のポーク美術館にも同様に、芸術家の方たちの協力による陶芸作品31点を、マイク・マンスフィールド駐日大使(当時)を介して寄贈しています。

大元から神道山へ教団本部の大教殿が遷座して2年が経った昭和51年(1976年)、明治32年(1899年)建築の旧大教殿は改修され、今日では珍しい木造の武道館として再スタートを切りました。これは柔道、空手道、剣道を通じて青少年の健全な育成に寄与しようとするもので、献身的な奉仕をいとわない良き指導者のもと、日曜日を除く毎夕、子供たちの元気な声が絶えない道場となっています。
 黒住教武道館として旧大教殿が再出発して間もない昭和52年(1977年)、オーストラリア・シドニー市よりニューサウスウェールズ州ポリス・シチズン・ユースクラブ(警察と市民による青少年健全育成団体)の柔道部一行が、初めての来日に際し、最初の試合を木造の道場で行いたいと申し出てきて、その年の年末、初の日豪少年少女柔道大会が開かれました。

実はこの頃、日本では女子の柔道試合はまだ正式には行われていませんでした。しかしこれがきっかけとなり、岡山県で行われる数少ない全国大会のひとつである都道府県対抗全日本女子柔道大会が、現在も岡山武道館で開催されています。また、この日豪少年少女柔道大会は、2〜3年毎に交流が重ねられ今日に至っています。
 なお、平成16年(2004年)に耐震補強改修工事を行ったこの武道館の壁面には、現代美術家・高橋秀氏が献納した13点の大作が常陳されています。黒住教武道館は同時に「高橋秀アート常設館」でもあり、現代美術に囲まれた武道館となりました。

平成2年(1990年)、神道山に教祖神の真筆の数々を陳列する宝物館が竣工しました。この宝物館・まることセンターには、お道づれや作家方からの献納による美術品などの展示室、本教教徒であり備前焼作家として人間国宝にも親子して認定された藤原啓、雄氏と藤原建氏の記念室、戦後の京都で前衛陶芸家集団「走泥社」を結成し、世界的に活躍した鈴木治氏の記念室があり、それぞれの展示室や記念室には本教に献納された作品が常陳されています。さらに、現代美術家・高橋秀氏や横尾忠則氏、向井修二氏、また藤田桜女史から献納された作品の数々もホールに陳列されています。

黒住教の教楽として古典音楽である吉備楽と吉備舞があります。これは明治の初年に、吉備の国・岡山に伝わる古典楽と雅楽とがひとつになった形で生まれたものです。明治11年(1878年)、東京の当時の青山御所にて、明治皇后と皇太后陛下(孝明天皇御后)への御前演奏の栄に浴し、戦後の昭和42年(1967年)には、 折からご来岡の昭和天皇皇后両陛下に御宿の後楽園で御前演奏の栄に浴しました。
 昭和55年(1980年)のニュージーランド・クライストチャーチ市カンタベリー美術館への日本現代陶芸作品贈呈式のときにもクライストチャーチ大聖堂で演奏し、平成5年(1993年)にイタリア・ローマ国立近代美術館で開催された現代美術家・高橋秀在ローマ30年記念展の開会式においても吉備舞が上演されました。
 平成10年(1998年)、黒住教研究者でハーバード大学宗教学部教授であるヘレン・ハーデカ女史が、ライシャワー日本文化研究所所長に就任したことを機に、吉備楽が招かれました。同研究所のホールで吉備楽演奏会が開催され、満場の聴衆からスタンディングオベーションの賞賛を受けました。
 なお、大元の一角には吉備楽道場があり、ここでは小野盛孝楽長を中心に日夜研鑽と後継者育成につとめています。

教団本部のある神道山10万坪は赤松の美林で知られていました。しかし、松くい虫のために次々と枯木になってしまい、平成5年(1993年)から岡山県出身の宮脇昭横浜国大名誉教授の指導のもと山の緑化につとめています。平成26年(2014年)現在、モチ・タブ・カシ・シイなど照葉樹林をつくる樹木のポット苗を中心に、約70,000本を植樹して育樹につとめています。
 また、神道山の生活排水は1日平均32トンになり、これを浄化してもリンとチッ素分は排除しきれませんが、逆にこれが育樹に役立つことから、浄化した排水を山に戻す「神道山水サイクル」を実施しています。このプラントも平成5年(1993年)に完成し、神道山の緑化をより一層進めています。

教主は、財団法人林原美術館副理事長、財団法人大本育英会理事長、くらしきコンサート後援「郷土の中高校生にクラシック音楽をプレゼントする会」会長、日本工芸会中国支部顧問、川崎学園の監事などをつとめ、毎春、川崎医科大学、川崎医療福祉大学の新入生に「医の心」また「奉仕の心」と題して講義をつとめています。
 また6代宗晴(当時教主)は、昭和57年(1982年)、招かれてアメリカ・プリンストン大学東アジア研究学部において黒住教について講演し、さらに昭和60年(1985年)にはアメリカ・オハイオ州・ライト大学とデイトン大学の宗教学部共催のシンポジウム「日本の神道・黒住教」で講演しました。