修行目標「ご恩返しを」 =伝統精神を尊ぶ大事=
平成18年1月号掲載
謹賀新年
かねてお伝え申し上げていることですが、ここ十二、三年、神道山でとり進められてきた緑化献木運動において植樹された三万本を超える木々は、実にたくましく成長を続けています。それは、皆様が真ごころ込めて祈りつつ植えて下さっていることはもとよりのことながら、樹木の生命線ともいえる深根(直根)の切られていないいわゆる�ポット苗�を植えていただいているからです。私たちはこの植樹運動を通じて、一本の木における「根」の大事をしみじみと考えさせられ、また教えられてきました。
さらに昨秋は、大元・宗忠神社ご鎮座百二十年記念祝祭を皆様とともに盛大に斎行できましたこと、まことに有り難い極みでありました。改めて「祈りの誠」「奉仕の誠」を捧(ささ)げられた皆様に心からの敬意を表することです。おかげで教祖記念館と旧の大教殿である武道館の耐震補強改修工事がなされ、建物の土台がしっかりしたものに成されたことは格別有り難いことでした。さらに尊いことは、宗忠神社本体はほとんど耐震補強工事をする必要のないほど基礎工事が堅牢(けんろう)なもので、改めて明治時代の先輩方の信仰心の強さそして思いの深さに感服しました。旧の大教殿は、宗忠神社がご鎮座なってほどなく着工された建築でしたので、その竣工の時、当時の管長(教主)四代様が「本格的な大教殿は他日を期す」と言われたと伝えられていますが、やはり基礎部分が軟弱でありました。そのため、昭和二十一年暮れの南海大地震で大きな被害を受けることになり、この度の工事まで支え柱に支えられたままの建物でした。教祖記念館も、宗忠神社ご鎮座に際して、今の場所に移築されたため、土台は決して強固なものではありませんでした。
樹木の根も、建物の土台、基礎部分も目には見えませんが最も大事なところで、樹木が健全に成長するために欠くことのできない働きをするのが根であり、建築に際して最も留意しなくてはならないのが土台、基礎工事だという当然のことを教えられた私たちでした。
今年、平成十八年五月二十八日、私たちは二十年前の昭和六十一年に続いて、伊勢神宮の式年遷宮の主要な神事のひとつである「お木曳(きひき)行事」に参列奉仕の場をいただくことになりました。
すでにご承知のように、伊勢神宮では千三百年を超える昔から、二十年ごとに、内宮、外宮をはじめ数多くの末社のすべてを建て替えることによって、天照大御神をはじめ神々により清々しくお鎮まりいただき、もってご神威の弥栄を祈る式年遷宮が連綿と続けられています。
教祖神ご在世中の江戸時代、六回も参宮されたみてぶりにならい、二代様の時の「千人参り」、明治時代になって三代様四代様と引き継いで行われた五回の「萬人参り」は、毎年の「伊勢団参」として、本教にたえることなく継承されて今日に至っています。
特に三十二年前の昭和四十九年、神道山に新しく大教殿が建築されての霊地大元からのご遷座に際し、その前年に斎行された第五十九回式年遷宮で�古殿�となった内宮御正宮のご用材が大量に下賜(かし)され、大教殿の御神殿の主要な所をすべてこの御神木によって造営することができました。このことは、私たちの思いもかけないことで、驚きとともに、教祖神以来のお伊勢様との格別のご神縁あればこそと感動し感銘を深くしたことでした。
このことに心からの神恩報謝の誠を尽くすべく、昭和五十五年の教祖神ご降誕二百年大祝祭の年、昭和の伊勢萬人参りのおかげをいただき、一万人を超えるお道づれは心はればれと大御前に頭を垂れました。続いて神道山ご遷座十年を機に、さらにご神恩に報いようと「ありがとうございます運動」の主要な奉仕として、伊勢神宮式年遷宮ご奉賛につとめ、平成五年の第六十一回式年遷宮に向かって足掛け十年、浄財を献納させていただいたことでした。平成六年の新春、清々しくまばゆいばかりの新宮(にいみや)に平成の伊勢萬人参りを果たした喜びと感激は私たちの記憶に今も鮮やかです。
このような本教の歴史と伝統にのっとって、平成二十五年の第六十二回式年遷宮に前回と同じように教団を挙げて奉賛の誠を捧げようと、昨年末の冬至大祭において御神前にご奉告、皆様に発表した次第であります。そして、式年遷宮ご奉賛の最初の身をもって奉仕する場が、来る五月二十八日のお木曳行事奉仕となるわけです。
お伊勢様と本教とのご神縁は、教祖神以来の実に強いものがありますが、わが国日本人には、その土台、深い根に、等しくお伊勢様に連なる強いものがあることを忘れてはなりません。特に今日の時代、この国に生きる人々は、�自(みずか)らの内なるお伊勢様�を呼び起こさなくてはならない時にあることを痛感しています。
ご承知のごとくわが国では、ありとあらゆる地域に氏神様がまつられています。それはその土地の神様である産土(うぶすな)の神様でもあるわけですが、氏神の氏は家、家族を表す呼称で、このことはその地域に住まう人々すべての家族のご先祖の霊(みたま)様がまつられている証(あか)しでもあると思います。それがゆえに、はるかなる昔から、地域を挙げての大仕事であるお米づくりにおいて、まず春の祭りで氏神様に豊作を祈り、秋の祭りで新米を供えて感謝の祈りを捧げ、神々とともに喜び合うという時を積み重ねてきたのです。ここでは、親と子の間柄そのままに先祖と子孫の関係が生きています。人々は亡くなった親、家族はもとより祖父母先祖の神々を思い祈り、誠を捧げ、この神々に見つめられ守られて共に生き続けてきました。
太古の昔、わが国をひとつにまとめ、名実ともに「大和(やまと)の国」となし、大王としてその徳をもって知ろしめされた方が「天皇」と崇(あが)められ、天皇様御自らが代々の天皇魂を御身に体(たい)すべく祈り奉仕された御社(やしろ)が、今日の伊勢神宮の元だと信じます。まさに、わが国日本人の中心をなす皇室の先祖神をまつる伊勢神宮が、日本の総氏神として国民の尊崇の念を集められるのも、わが国の長い歴史の自然な流れでありましょう。
伊勢神宮が、全国の神社という神社の�総本宮��本宗��神道の大元�であることも当然のことです。
実にお伊勢様は、わが国の深根、直根であり、私たち国民がその上に拠(よ)って立つ大いなる土台であります。
私たちの伊勢式年遷宮ご奉賛は、教団としては教祖神以来の伝統精神の継承であり神恩報謝の場であると同時に、今日の時代に生きる人々へのわが国古来の根本精神の覚醒(かくせい)とその伝承の運動であることをしっかりと腹に据(す)えて、「ご恩返しを」の精神で「祈りの誠」「奉仕の誠」を捧げてまいりたく存じます。
お道づれ皆様のご賛同ご奉賛を心からお願い申し上げます。