四方八洲男綾部市長との対談
平成20年4月号掲載
<副教主> 私たちは“宗際活動”などと言っておりますが、宗教協力に対する四方市長のコメントをいただけたらと思います。
<市長> 日本の宗教者の方々が宗教・宗派の壁を取って、世界連邦や世界平和のために共に祈り、共に行動しておられることは、申し上げるまでもなく素晴らしいことです。イスラム教とユダヤ教という世界から見ても、双方の皆さんを招いて、平和のための行事を粘り強く協力して行っておられることに対して、これはテルアビブ(イスラエル)の大学でも私はそのことに触れたのですが、皆さん非常に高く評価しておられますね。
これは、日本の宗教の大きな特徴だろうと思います。やはり根底に八百萬神(やおよろずのかみ)と申しましょうか、神々への信仰が根付いていますし、大乗仏教のおおらかな精神もあるでしょうし、また、神仏混合の伝統ということも実際あるんですね。そういう日本人の宗教観と申しましょうか、排他的ではない、それぞれ独自の道を持ちながらも必要なことにおいては共に立つという、別個に立って共に活動するという特質は、日本に住んでいるわれわれにとっても宗教に対する安心感になりますし、イスラム教やユダヤ教、またキリスト教も含めて一神教の歴史をもつ人々が日本の在り方というのを見て、きっと参考にされるんじゃないかと思います。
<副教主> 実は、今年7月のG8洞爺湖サミット直前に、「平和のために提言する世界宗教者会議~G8北海道・洞爺湖サミットに向けて~」というWCRP(世界宗教者平和会議)主催の会議が札幌市で開催されます。サミット議長国である日本の福田康夫首相に提出する意見書、特に環境問題(地球温暖化)と平和への取り組み(核不拡散)に対する内外諸宗教者による共同声明の作成を目的としているのですが、日本の宗教の特質が活(い)かされた会議になればと願っています。
<市長> それは意義がございますね。「比叡山宗教サミット」の方はどうなんですか。
<副教主> 「比叡山宗教サミット」は昨年8月に20年の記念大会が開かれ、今年も8月4日に主に国内の宗教者が比叡山山頂に集って平和の祈りが捧(ささ)げられます。一昨年の夏に開催された「第8回WCRP世界大会」や毎年行われる「世界連邦平和促進全国宗教者大会」、また比叡山での「祈りの集い」等を通じての諸宗教者による平和への祈りが、G8サミットという現実の問題を議論する場に何とか反映されるようにと念願しています。私は、今回の会議の実行委員と起草委員というお役をいただいているんです。
<市長> 重要なおつとめですね。日本ならではの素晴らしいことですから、しっかりつとめて下さい。会議の成功をお祈りします。
<副教主> 有り難うございます。ところで、昨年の秋にチベット仏教のダライ・ラマ法王が来日された際に、四方市長の呼びかけで開催された「全国水源の里シンポジウム」の資料を持参して法王にお目にかかってきました。過疎化と高齢化の著しい日本国内の水源地の山村がネットワークを図って、河口流域の都市部へのメッセージを発するという会議の趣旨に「さすが四方市長…」と敬服していたもので、ユーラシア大陸の水源地であるヒマラヤ、チベットのダライ・ラマ法王にぜひ報告しておきたかったのです。
<市長> 教主様からすぐにご報告いただいて、ダライ・ラマ法王が「チベットは世界の水源の里だから乱開発から守らなければ、世界の人々に申し訳が立たない。だから綺麗(きれい)な環境と水源をしっかり守っていかねばならない」というようなことを仰(おっ)しゃったと伺い、有り難く思っておりました。上には上があるもので、それに比べたら日本の水源の里などはちっぽけなものですが、やはりその思想は、環境を守るとか、水源を守るとかいう水神信仰という昔からの精神ですね。世界の水源というのは、チベットにあるんだなということを感じて、水というのは本当に大事な資源だと改めて思いました。
<副教主> 中東の問題も、これからは何よりも水争いが熾烈(しれつ)になると言いますよね。
<市長> ええ、全くその通りです。水、特に飲料水がこれから少なくなりますからね。
<副教主> 何より感心しましたのが、一般的に用いられる「限界集落」という無機質な言い方ではなく「水源の里」という温(ぬく)もりのある表現に感激いたしました。
<市長> 有り難うございます。水源の里の思想というのは、上流は下流を思い、そして、下流の人々は上流に感謝するという、日本の古来の思想をもう一度復活させることだと思っています。それは、先祖に感謝するということにもつながっていくことでしょうしね。
<副教主> 全くその通りですね。今、目の前のことしか見えない人があまりにも多すぎますから…。
<市長> そうですね。ぜひ国民運動にして盛り上げていきたいですね。現在、151の市町村が加盟して下さっておりまして、これを200ぐらいにして全国的な運動にしたいと思っています。そのために「水源の里基金」というのを作って、まあ、宣伝したりするためにはやはり多くの人の力を借りなければいけませんので、募金箱を作って加盟している自治体はもちろんのこと、ぜひ黒住教様の方にも1つ置いておいていただければと思います。
<副教主> 本教には「水源の里」で歴史を重ねてきた教会所が次々とありますから、1つといわず置かせていただきたいと思います。
<市長> ぜひお願いします。どうぞ教主様によろしくお伝え下さい。
<副教主> かしこまりました。本日は貴重なお時間を有り難うございました。
