感動・生命の息吹
平成21年5月号掲載
いま、神道山は萌(も)えいずる新緑の季節を迎えています。まるでバリバリと音を立てて若葉の一枚一枚が成長し、色を濃くしているような、生命の息吹を感じます。
実は、大教殿前の池の中でも、一本の榊(さかき)が新芽を伸ばしています。「池の中で、榊が…?」と不思議に思われるでしょうが、ちょうど大教殿真正面に位置する石の上の、わずかな段差が苔(こけ)むした個所に根付いた榊が、いつの間にか“玉串”ぐらいの大きさにまで成長して、精いっぱい葉を広げているのです。本部の職員に教えてもらって私がこの榊の存在を知ったのは昨年末のことでしたから、寒い冬も乗り越えて、いま新緑の時を迎えているこの“元気サカキ”を、ぜひお道づれの皆様に紹介しておきたいと思いました。石の上から根っこを伸ばして池の水を吸収しているようですから、まだまだ大きくなりそうです。生命力のたくましさとご神徳の有り難さを感じて下さい。
神殿(みあらか)の三喜常磐木(みきときわぎ)の御神徳(みいつ)うけ
あな有り難き元気サカキよ
お笑い種(ぐさ)、失礼しました。
ところで、先月13日と15日に相次いで海外からの参拝者が神道山を訪れました。それぞれの発言は、本誌来月号の「先の月のお参り」で紹介されますが、前日から神道山に1泊して13日の素晴らしい御日拝に大感激したシーラ ・フリッシュさんとガル・ロートルズさんは、友人から「日本を旅するのなら、ぜひ神道山に泊まらせてもらって朝日を拝んでくるように!」と強く勧められて訪ねてきた、イスラエル・テルアビブ在住のユダヤ人でした。2人の友人というのが、私の英国留学時代の恩師に紹介されて平成15年の冬至大祭に参拝したロニー・カハナさんという筑波大学の留学生(当時)で(本誌平成16年2月号「先の月のお参り」参照)、以来電子メールを通じてやりとりしてきた彼女が、御日拝の感動忘れ難く、今回初めて日本を訪ねる友人に神道山への参拝を勧めたのでした。
一方、2日後の訪問者は、トルコ人医師で医療NGOを主宰するファフレッティン・エル氏一行でした。本稿先月号で紹介しました「RNNトルコ・スタディーツアー」を計画してくれた岡山トルコ文化センター理事長のカディール・デミルジャン氏が、イスラム圏を中心に国際的な医療支援活動を展開しているエル氏の初来岡に際して、「まずは神道山へ…」と案内してきたのです。エル氏は、開口一番「テレビで拝見しましたよ」と言って、私たちのトルコ訪問を伝えた地元の報道番組を見ていたことを話してくれました。
ロニーとカディールという友人を通じて新たなご縁が広がったのも私にとって大きな喜びでしたが、立て続けにユダヤ教徒とイスラム教徒を緑したたる神道山にお迎えして親しく懇談できたのは、私の貴重な経験になりました。
ユダヤ人の2人は、山の端から昇る朝日の厳かさと絶え間なく鳴き交わす鶯(うぐいす)をはじめとした野鳥のさえずりに心洗われたと語り、トルコ人の一行は、木々の中に鎮まる大教殿のたたずまいに日本の神道の荘厳さを感じたと言いました。降り注ぐご陽光と生命の息吹あふれる豊かな自然は、誰とっても尊い御(み)恵みであり、その有り難さを心に感じて、天地自然の大いなるはたらきに対して素直に頭(こうべ)を垂れる気持ちに、宗教の違いも民族の違いもないことを、改めて確信させていただいた“異教徒”の方々の来訪でした。
