万国宗教会議メルボルン大会(平成21年12月3日~9日)に出席して②

平成22年3月号掲載

 この度の万国宗教会議メルボルン大会期間中に、久々の再会を喜び合えた旧知の方々とのエピソードを紹介させていただきます。
 スリランカ全土で、貧しい農村の経済的自立を仏教の教えに基づいて指導・推進しているサルボダヤ運動は、国連からも偉大な取り組みとして高く評価されている社会活動団体ですが、その創始者であり今も精力的に貧困問題解決に向けて世界を飛び回っているA・T・アリヤラトネ博士に、私はとても懇意にしていただいています。二十世紀を代表する一人にも数えられる博士との出会いは、平成9年(1997)に開催された「比叡山宗教サミット10周年記念」の大会で、「宗教対話の歴史と未来」について発言した私に博士が握手を求めて下さったのが切っ掛けでした。今や専務理事として活動を実質的に統括している令息のヴィンヤ氏が、私と同年齢であったこともあり、当時私が事務局長をつとめていた「国際貢献トピア岡山構想を推進する会」の主催による「おかやま国際貢献NGOサミット」に彼を派遣して下さったことから、アリヤラトネ父子との個人的な親交が深まり、以来、本当に親しくさせてもらっています。
 また、米国・エール大学のジョン・グリム教授とメアリー・E・タッカー教授夫妻との再会も、今回のメルボルン出張の最高の喜びの一つでした。今や地球環境問題に対して発言する宗教学者の代表として世界が認める夫妻の活躍は、今回の会議でも特別注目を集めていましたが、平成2年(1990)に神道山で行われた「神道国際研究会」に夫人のタッカー教授が出席して下さって以来、事あるごとに意見を交わしながらご縁を深めさせてもらっています。1993年の米国・シカゴでの「万国宗教会議百年記念大会」の直後、私は当時夫妻が勤務していたバックネル大学での特別講義を引き受けたのですが、その夜お宅に泊めてもらって遅くまで語り明かしたことは今も忘れられない楽しい思い出です。さらに、本教が日本使節団の幹事教団をつとめた「ミレニアム世界平和サミット(国連宗教サミット)於ニューヨーク、2000年」の研究部会で、私が環境問題について神道の見解を発表する機会を与えられたのも、専門家としての彼ら夫妻からの推薦があったからでした。実は、“三喜(みき)の御歌”と称(たた)えられる御神詠「有り難きまた面白き嬉(うれ)しきとみきをそのうぞ誠なりけれ」の英訳に際して、「心のドアを開く三つのキー(鍵)」という解釈を示して下さったのがタッカー教授です。
 今まで、別の経緯でご縁のあったアリヤラトネ博士とグリム教授・タッカー教授夫妻と、初めて一緒に親しく話をする時間を持てたことが、個人的には今回の一番の喜びとなりました。世界的な立場の方々ですから双方はよくご存じだったのですが、それぞれと私がじっ懇の間柄であったことを、当の私が驚くほど感激して喜んで下さったことを非常に嬉しく思いました。
 もう一人の友人は、宗教対話の専門家として学位を得たばかりの、インターフェイス・センター(米国)の研究者であるマット・ワイナー博士です。9・11米国同時多発テロから2年後の2003年9月11日にニューヨークで行われた追悼・慰霊式で、締めくくりの祈りを捧(ささ)げさせていただいた私の案内役をつとめた彼とは、出会った直後から意気投合し、私が事務局長をつとめるRNN人道援助宗教NGOネットワークが平成16年(2004)に行った「RNNフォーラム」にさっそく講師として招いて親交を深め、以来友情を育(はぐく)んできました。専門家として世界の宗教対話と協力活動を冷静に見つめている彼は、今後とも私のよきアドバイザーであり理解者であることを再確認したことです。
 その他、紹介しきれないのが残念ですが、この度の「万国宗教会議メルボルン大会」への出席は、今までのご縁を一層深めることができた有り難い出張でありました。 (完)