重要な会議の委員として

平成23年8月号掲載

 報告が遅くなりましたが、私は、平成13年4月から5期10年にわたって就任していた「宗教法人審議会」の委員を、本年3月末日に任期満了にて退任しました。文部科学大臣の諮問機関である当審議会は、日本国憲法が保障する信教の自由と結社の自由の遵守を前提として、国の行う宗務行政上に生じる諸問題について審査請求を受けて協議する重要な会議で、かつて、教主様も委員を務めておられました。
 一年に数回の会議ですが、宗教法人の運用(悪用も含む)を巡る法律上の諸問題による訴訟事項(裁判沙汰)を国が対処する際に、客観的な立場から承認・非承認の判断を下さねばならない場面が多く、とても責任の重い務めでした。構成委員は法律家と宗教学者と宗教者が各6~7名ずつ。専門家として具体的な発言をするのは法律家と宗教学者の委員で、私たち宗教者は当該者(団体)の信教の自由が脅かされていないかを確認する立場での出席でした。ただ、明らかに宗教法人側に問題がある場合が多く、宗教の会的責任について度々考えさせられる貴重な機会となりました。私が就任する前には、オウム真理教(当時)の騒動や宗教法人法の改正等で混乱した時期もあったようですが、この十年間は平穏に務めを全うすることができ、有り難く思っています。
 ところで、審議会委員の任期満了を前に、私は文化庁文化部宗務課宗教法人室のアドバイザーとしての私的機関である「宗教法人制度の運用等に関する調査研究協力者会議」の協力者(委員)に推挙されて就任し、引き続いて国の宗務行政に対して微力ながら協力させていただいています。
 この会議は、審議会よりも非公式で任期もなく、訴訟問題への対処よりも宗務行政そのものに対する相談事が多く、一層“お役に立っている感”が際立っている務めです。ただ、8人の協力者の内、宗教者は、毎年交代する「財団法人日本宗教連盟」(日本のすべての宗教教団を包括する団体)の事務局長と私だけ、すなわち当分の間継続して務める宗教者の委員は私一人という責任の重さです。
 「何故(なぜ)、私が推挙されたのか…?」と当初当惑しましたが、案の定と申しましょうか、結局のところ「本教に対する社会的信頼の厚さ」が理由でした。与えられた任務を無事に果たして、お役に立ちたいと思っています。
 もう一つ、私が数年来責任の重い委員として発言・協力してきた重要な会議があります。
 「世界宗教者平和会議(WCRP)」という諸宗教間の対話と協力を世界的に推進してきた団体を、ご存じの方も多いと思います。41年前の発足の時から教主様にはその意義を評価して理事として協力して来られ、私も「第8回世界大会」(平成18年開催-於京都)の頃から、幾つもの役職を引き受けています。
 地球規模の宗教協力体制であるWCRPの原点であり、日本国内の組織の中心が「財団法人世界宗教者平和会議日本委員会」ですが、これからの時代の要請に応えられる「公益法人」としての再出発の道が模索されることになり、そのための「特別諮問委員会」が平成19年8月に設置されました。私は6人の委員の一人に指名されて、「公益法人法の改正」に伴う認定基準に照らし合わせて組織を抜本的に見直すという困難な作業に数年来携わってきました。いよいよ具体的な組織案がまとまり、会の名称も「法人移行のための準備委員会」と改められ、引き続いて委員として最終の段階を迎えています。この秋に申請書が国に提出され、来年四月から「公益法人世界宗教者平和会議日本委員会」として新たな出発の時を迎える予定です。
 なかなか内容まで紹介する機会がありませんでしたが、私にとって貴重な経験と学習の場でもある重要な会議について報告させていただきました。
 猛暑の上、節電への配慮が欠かせない今年の夏です。くれぐれもご自愛下さいますように…。皆様の心身健固・安全をお祈り申し上げます。