国際貢献トピア岡山構想のめざすもの
RNN(アールエヌエヌ)(人道援助宗教NGOネットワーク)の可能性②
平成24年6月号掲載
RNN(人道援助宗教NGOネットワーク)の活動は、本稿先月号で紹介しましたように毎月の定例会議が基本ですが、発足の母体となった「トピアの会(国際貢献トピア岡山構想を推進する会)」が平成16年に“発展的解散”をするまでは、「おかやま国際貢献NGOサミット」の分科会とし「人道援助宗教NGO会議」をほぼ毎年開催して、国内外の宗教NGO関係者との意見交換を定期的てに行ってきました。
RNN設立の場となった「第3回 おかやま国際貢献NGOサミット」(平成8年11月開催)では、アジアを中心とした海外10カ国・四宗教(キリスト教、イスラーム、仏教、ヒンドゥー教)から13名の代表を招き、国内招聘(しょうへい)者と合わせて15の宗派・教団からの正式出席者34名の総意による「ステートメント(宣言文)」を採択しました。翌年には、仏教の伝統精神に根差した地方村落の経済自立支援をスリランカ全土で展開する民間団体として、世界的に知られる「サルボダヤ運動」のヴィニャ・アーリヤラトゥネ事務総長を招いて、宗教NGOの可能性を話し合いました。以来、ヴィニャさんは私の最も親しい海外の友人の一人で、かつてその御宅に招かれたこともあります。
平成10年には、3年目を迎えたRNNの活動報告と課題の検証をパネルディスカッション(公開討論会)として行い、続く平成11年と12年は私が発表者となって、南アフリカ共和国のケープタウンで開かれた「万国宗教会議」(1999年)と、ニューヨークの国連本部で開催された「国連ミレニアム世界平和サミット(国連宗教サミット)」(2000年)の報告を行いました。
平成13年は「人道援助宗教NGO会議」としては開かれませんでしたが、世界を震撼(しんかん)させた「9・11米国同時多発テロ」が起こり、イスラームに対する恐怖心や誤解や偏見を増幅させないために、10月3日に霊地大元・生々館(せいせいかん)道場(前大教殿)を会場として「RNN 緊急シンポ『イスラーム-その平和の教え-』」を急きょ開催しました。宗教法人日本ムスリム協会の樋口美作会長(当時)を招いて行ったこのシンポジウムは、9・11後にわが国で最初に行われた宗教協力によるイスラーム勉強会として大変注目されました。
イスラーム文化圏との対立を警告した「文明の衝突」が世界中で話題になり、国内では“宗教ばなれ”が深刻化を増す中で開催した平成14年の「人道援助宗教NGO会議」は、北アイルランドの元テロリストで、服役中にキリスト教の洗礼を受けて宣教師になったという異例の経歴を持つ、ヒュー・ブラウン牧師を招いて行ったパネルディスカッションでした。「宗教は平和の担い手となり得るか」と題した会議の主催者として、私は、「世界平和に向けて“対話と祈り”を続けてきた宗教者は、9・11テロに忸怩(じくじ)たる思いを抱いた。しかし、憎しみの論理を超越してきたブラウン師の経験から、ひたすら“赦(ゆる)しと寛容”の精神を人々に訴え続けることが宗教者の使命とあらためて確信した。宗教を平和の担い手とするための努力を、これからも続けて行かねばならない」と、締めくくりの挨拶(あいさつ)をいたしました。
定期的な国際会議の最終年となった平成16年(平成15年度事業として開催)には、ニューヨーク宗際センターの研究員で、今も私の親しい友人の一人であるマット・ワイナー博士(現在米国・プリンストン大学勤務)らを招いて「平和構築のための宗教間対話」と題したディスカッションを行いました。
「トピアの会」解散後は、それまで話し合われてきた意見・提言の数々を財産として活動していますが、海外からも出席者を招いて行った会議としては、平成19年5月に「現代世界の危機と宗教の役割」をテーマに「RNN十周年記念フォーラム」を開催しました。来賓として出席して下さった教主様から、「幅広い活動を、“宗我”を離れて相互に協力して行っている」とのご祝辞をいただき、更なる協働を誓い合った仲間たちと、連合体ならではの活動を展開し続けたいと願っています。