子を思う親ほど親を思えただ 孝だに立てば忠も身も立つ(赤木忠春高弟詠)
平成20年4月号掲載 年間3万人超といわれる自殺者の数や、頻発(ひんばつ)する殺人事件、とりわけ、親が子を、また子が親を手にかけるといった痛ましい事件の報道に接するたびに、「この国は、一体どうなってしまったのか…」との深い憂(うれ)いを禁じえません。原因を限定して語ることには慎重であるべきですが、少なくとも敬神崇祖(けいしんすうそ)の念の篤(あつ)い人や家庭に、このような最悪の悲劇は起こらないと考えます。それは、いかなる極限状況にあっても、「親を、また先祖を悲しませるわけにはいかない」という“心のブレーキ”さえあれば、最終段階で殺意(自分への殺意も含む)を思いとどまらせるはずだと信じるからです。
「古来、わが国では先祖教ともいえる先祖崇拝の信仰が大切にされてきました」と教主様が「ご告諭」に示されているように、宗派・教団の違いはあっても、“先祖教”であることが、日本の宗教、すなわち“日本教”に共通する教えでした。殺人行為という最悪事態にまで至らずとも、現代日本人を蝕(むしば)む諸悪の根源は、日本人としての原点である命の根源(ルーツ)を軽視しすぎた結果の“根腐れ”といわざるを得ないと思うのです。
“先祖”というと、“罰(ばち)”とか“祟(たた)り”とか“障(さわ)り”といった陰湿な側面ばかりが強調されがちなのも現代社会の誤った傾向ですが、私たちにとって親子の間柄であるご先祖に、純粋素直に頭(こうべ)を垂れて〈孝養の誠〉を捧(ささ)げることが何よりも大切です。親の世代の方々には、離れて暮らす子や孫に声をかけて、ご先祖の節目に法事・年祭、そして墓参りをつとめて行(おこな)って下さい。そして、亡き曾祖父・曾祖母、祖父・祖母、父・母の在りし日のことを、子や孫に語ってやって下さい。親子・家族の絆(きずな)が希薄になりがちな時代だからこそ、自(みずか)らの拠(よ)って立つ根っこ(アイデンティティー)を次世代に語り継いでもらいたいと切に念願するものです。「孝だに(さえ)立てば忠も身も立つ」との今月の御教えを、この時代にこそ心してつとめてまいりましょう。
親の親その親々をたずぬれば天照します日の大御神
(赤木忠春高弟詠)