日々家内心得の事
一、腹を立て物を苦にする事
恐るべし 恐るべし(御七カ条第二条)

 教祖神が、「千日の御参籠」中に神宣(託宣)を得て「五カ条」に追加して、しかも二番目に、してはならないこととして掲げられたのが「腹を立て物を苦にする事」です。教祖神は「腹を立て物を苦にするが穢の第一」(御教語)とまで仰ってご教示下さっています。

 しかし、腹を立てたり物を苦にすることは誰しも陥りやすいことです。いや、私は決して腹を立てないと言う人がいるかもしれませんが、実際は形に現れないだけで、心の中では腹が立ち、その感情を押さえている場合がほとんどです。ですから、堪忍(我慢)している状態で、これは物を苦にしていることになります。

 教祖神が、和気郡本庄村尺所(現岡山県和気町)の酒造業を営む大地主の大森武介氏宅をご訪問になった時の御逸話(「教祖様の御逸話-日新社刊」所収の「堪忍について」)があります。大森家の長押(柱と柱を繋ぐ水平材)に「堪忍」と書かれた額が掛けられていました。大森氏はつつしんで「わが家の家業はおかげさまで繁盛しておりますが、何分にも使用人も多く、それらの者を取りまとめていくには『堪忍』がなくてはとてもかないませんので、日々額を見ては反省しています」と申し上げますと、教祖神は「それは結構なことですが、いっそのこと、その堪忍もお止めになったらいかがでしょうか」と仰いました。当初、大森氏はその御言葉の真意を分かりかねていましたが、やがて教祖神は御歌を詠じられました。
 堪忍をするより元の腹立てな
  腹が立たねば堪忍もなし
大森氏は、大いに悟るところがあったといいます。

 医学的にみると、腹を立てると自律神経が乱れて心拍数や血圧が上昇し、血流の悪化を招いてしまいます。その結果、細胞は栄養不足になり、老廃物や疲労物質は排出されにくくなることもあります。いわゆるストレスとなり、万病の因となるのです。教祖神は、相次ぐご両親の死を悲しむあまり、労咳(肺結核)となり死に瀕したことを最大の親不孝であると猛省し、ご分心を傷めることのないように〝陽気〟を徹底して養われたのです。御七カ条の第二条は、こうした、教祖神の〝反省の誠〟から生まれたものといえましょう。