「やりたいことが見つからない…」
という貴方へ
教主 黒住宗道

 「やりたいことが分かれば、もっと頑張れるのに…」とか、「自分は、一体何に向いているのか知りたい」とか、「大学に行ったらやりたいことが見つかるかと思ったけれど、結局何も見つからなかった…」等の悩みを抱えて、立ち往生している若い人たちが大勢います。先年来「黒住教主」として発信しているSNSを通して受けた質問や相談に、私が応じた内容を総括的にまとめてみましたので、お子さん、お孫さん、また曾孫さんに読ませていただければと思います。

 …が、その前に「チャットGPTでも尋ねてみたけど…」という、今どきの若者ならではの“前置き”をして、それでもスッキリしない胸の内を明かしてくれた投稿がありましたので、まずは巷間話題の「チャットGPT(以下AI)」なるものに初めてアプローチして、「『やりたいことが見つからない』と感じている人へのアドバイスは…?」と問うた結果(原文のまま)を、まず紹介しておきます。

 「やりたいことが見つからない」と感じている人へのアドバイスは以下の通りです。
1.自分自身について深く考える:自分が何を得意とし、何に興味があるのかを考えてみましょう。また、自分自身の価値観や人生において何が重要なのかを考えてみることも大切です。
2.新しいことにチャレンジする:新しいことにチャレンジすることで、自分自身が何に興味があるのかを発見することができます。例えば、新しい趣味やスポーツ、アートや文化に触れることができます。
3.専門家や友人からアドバイスを得る:専門家や友人に自分の状況を相談してみましょう。彼らが提供するアドバイスや情報が、自分自身がやりたいことを見つけるのに役立つかもしれません。
4.目標を設定する:やりたいことが見つからない場合は、自分自身に目標を設定してみましょう。目標を達成するために必要なスキルや知識を習得することで、自分自身がやりたいことを見つけることができるかもしれません。
5.行動を起こす:自分自身がやりたいことを見つけるためには、ただ考えるだけでなく、実際に行動を起こすことが大切です。自分自身が何をやりたいのかを発見するために、様々なことに取り組んでみましょう。
以上のアドバイスを参考に、自分自身がやりたいことを見つけるために行動してみてください。

 上の回答文がほんの数秒で出てくるのですから、驚き感心するとともにいろいろと考えさせられます。テーマがぼやけてはいけませんから、この最先端の文明の利器に対する意見は述べずに、本稿では回答文への感想とアドバイスだけを綴らせていただきます。

 まず、AIが指摘した五つのポイントは「申すまでもない…」ことではありますが、立ち往生して悩んでいる貴方の「何はともあれやってみようかな…」という“その気”の切っ掛けになるのであれば、大いに参考にすべきことだと思います。とりわけ「5.行動を起こす」は、どんな悩み事の解決策にも通じる必要事項です。

 ただ、(そのようなことは)言われる前から、それなりに「自分のことを深く考えたり、新しいことに挑戦してみたり、人に相談したり、目標設定してみたり、また行動したり…」(それ以外のことも含めて)いろいろやってみたものの、残念ながら期待する答えが得られなくて今もなお悩んでいるのでしょうから、よっぽど「目から鱗…」の“ご名答”に出会うまで、貴方は悩み続けるのかもしれない…と思わざるを得ません。

 今回引用した「チャットGPT」が象徴的ですが、科学技術の目覚ましい発展によって、 “答えらしきもの”が居ながらにして直ちに入手できる時代だから、更に「もっと良い答えがあるのでは…」と探し求め続ける“ない物ねだり症候群”に誰もが陥りやすいことを、まず気を付けておかなければいけません。今も若い人たちの間で使われている言葉なのか知りませんが、それが「ワンチャン」。夢をあきらめないことは大切ですが、「『ワン モア チャンス』がきっとある…」と、現状の価値(掛け替えのなさ)を見出さずに「次へ」また「その次へ」を望んでいるだけでは、気持ちは永遠に満たされません。

 実のところ、「『“今”・“此処”』に答えはきっとある」というのが昔も今もこれから先も変わらない不変・普遍の真理ですが、現代の若者に「石の上にも三年」だけをアドバイスしても通じませんから、「やりたいことが見つからない…」という貴方へ、私は敢えて「消去法の選択」をアドバイスしたいと思います。

 「やりたくないこと」を避けて幸せな人生を送れるはずはありませんが、少なくとも「やりたいこと」が「やりたくないこと」の中にあると最初から思う必要はありません。そして「やりたくないこと」の方が、断然見つけやすいものです。見つけやすいからこそ、あまり一所懸命に「やりたくないことや苦手なことや嫌いなこと」を探さなくても、いま自分がいる環境の中で、ザックリと「消去法」で分類することによって、結果的に「やりたいことかもしれないこと」が浮かび上がってくるはずです。無限・無数の情報の中から「やりたいこと」をピンポイントで見つけようとするから疲れるのであって、消去法によって残された“やりたいことかもしれないこと情報群”は、貴方にとって可能性を秘めている宝の山に違いありません。

 消去法というとネガティブ(否定的)な印象がありますが、“-(マイナス)の-(マイナス)は+(プラス)”です。ポジティブ(肯定的)な要素が増えると周囲の見え方や感じ方も違ってきます。そこに、日の光りが差し込むように、より良い結果(おかげ)が導かれるのです。「有り難いなぁ…」とか「おかげさまで…」の気持ちが大きくなってきたら、きっと「やりたいこと」も間もなく見つかることでしょう。

 人工知能(AI)には答えることのできない、“心なおしと心を養う道”の観点からアドバイスさせていただきました。