大槌町での合同慰霊祭と吉備楽演奏会

平成25年5月号掲載

 去る3月18日、岩手県の釜石市と大槌町の仏教寺院十七カ寺から成る釜石仏教会主催の「東日本大震災三回忌法要」が、大槌町の浄土宗大念寺で営まれ、共催した本教とご縁の深い国際医療救援NGOのAMDA(アムダ)からの依頼を受けて、私は吉備楽楽人ら5名の本教布教師と共に現地を訪れ、慰霊祭をつとめさせていただきました。この法要には、私が事務局長をつとめるRNN(人道援助宗教NGOネットワーク)のメンバーである天台宗と真言宗の僧侶2名ずつが岡山から日帰りの強行日程で参列して、聲明(しょうみょう)と御詠歌を朗唱して祈りを捧(ささ)げて下さいました。
 檀家(だんか)の多くが被災した各宗派の地元寺院による合同法要ですから、昨年その計画が立てられた時から、各々(おのおの)が多忙を極める3月11日前後を外して、まず昨年は釜石市、今年は大槌町での実施が決められていました。そして、祈りの場となった大念寺は、昨年3月に私が担当理事として参列した(公財)世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会主催の「追悼と鎮魂ならびに復興合同祈願式」の会場として提供して下さった寺院であり、さらに、一昨年末に「AMDA大槌・健康サポートセンター」設立準備の手伝いに訪れた本教スタッフが慰問させていただいた場所でした。
 奇(くす)しき(不思議な)とも言えるご縁をいただいて、釜石仏教会副会長でもある大萱生(おおがゆう)修一大念寺副住職との信頼の絆が結ばれていたからこそ、この度の 「三回忌法要」では、他の諸宗教合同式典ではあまり例のない式次第(典礼)によって祈りが捧げられることとなりました。
最初に黒住教吉備楽の響きの中を導師である大萱生師以下仏教会僧侶が参進して開式の読経、そして私が斎主として正中(せいちゅう)に進んで禊祓(みそぎはらえ)詞(のことば)、告辞、玉串奉奠(ほうてん)という神道式の慰霊祭をつとめ、引き続いてRNNの天台宗と真言宗の祈りと地元仏教会による読経の中を参拝者が順次焼香、最後に導師が供養の祈りである回向(えこう)をつとめて閉式という、仏教と神道(黒住教)の祈りが一体化した法要(祭典)となりました。釜石仏教会会長に続いて挨拶(あいさつ)させていただいた私は、今までのご縁と3月11日に行った神道山・日拝所での「RNN慰霊祭」を紹介して、岡山からいつも励ましの祈りを捧げていることをお伝えしました。最後に、吉備楽の音(ね)の中を一同が退下(たいげ)した後、しばらく参拝者に吉備楽の楽曲が披露されて、悲しみの中に感動と感謝が入り交じった厳かなひとときは幕を閉じました。
 翌19日、同じ大槌町内の征内(まさない)仮設団地を訪ねて、私の話と吉備楽を聞いていただく時間を持ちました。
 「小さな仮設団地には慰問のために訪れる人もないので、ぜひ吉備楽を聞かせてあげてほしい…」というAMDAスタッフの希望に応えた訪問でした。小さな仮設団地の小さな憩いルームでの演奏会でしたが、時に面白おかしく話をしながら私が司会進行して、初めて耳にする吉備楽の音色をとても喜んでいただきました。演奏した楽人方にとっても、いつもとは異なる緊張を感じた貴重な体験になったようです。参加者の中には、昨年夏に私が団長をつとめた岡山経済同友会主催の大学生ボランティアで訪れた大槌中学校の生徒がいて、また一つ新たなご縁となりました。
 今回初めて大槌町を訪れた4名が感想を記していますように(日新本誌10ページ)、この地域の復興はほとんど進んでいない状態です。引き続いて、支援・激励の“祈りと奉仕の誠”を尽くしてまいりたいと思っておりますので、お道づれの皆様のご理解とご協力を、よろしくお願い申し上げます。