大神の御蔭はどこにそれそこに
         己が心のそれそこにそれ(松岡清見〈湯浅薩摩〉大人詠)

平成27年12月号掲載

 4年間に亘る“祭り年”を締め括る今月の御教えは、教祖宗忠神直門の松岡清見大人(松岡家の養子になるまでは湯浅薩摩大人)の詠まれた、つい微笑んでしまいたくなるような朗らかで有り難い御歌です。

 130年前の大元・宗忠神社建立に際しては新築係員30人の内の一人として明治期の本教の隆盛に貢献された大人を本稿で紹介させていただくのは、「教祖様の御逸話」(日新社発行)に3度も登場して、それぞれの場面で宗忠神ならではの尊いお導きを直接受けておられるからです。

 時間的に大人の名が最初に出てくるのは、「湯浅薩摩氏今村宮の御斎神を問う」という御逸話です。神官として同職であった宗忠神と同宿された大人が、枕を並べて横になったまま「貴殿の奉職なさる今村宮の御斎神は…」と尋ねた際に、宗忠神がわざわざ袴まで着けて身を正してお答えになったという御逸話で、神仕えする者の心構えを深く学ばれた湯浅氏(当時)でした。

 また、重篤の身でありながら「黒住大先生の御宅に連れて行ってくれ!」と懇願した中野屋庄兵衛という篤信家が、道中で事切れたまま運び込まれた際に、「松岡さん、私が御祈念をしますから、その間おまじないを…!」と促されて、不安に駆られながらも宗忠神のリンリンたるお祓いの声に力を得て無我夢中でお取り次ぎをした結果、死人が蘇るという奇跡的な場面に当事者として関わられた、「この左京を師と慕う者を見殺しにはせぬ」の御逸話。

 もう一つは、火事で家を失った上に病気になって宗忠神に救いを求めた人に、「火事がいてそのまた上に胸を焼き心の火事ぞ丸焼けになる」と「損をしてそのまた上に気を痛め命の損ぞまる損という」という諧謔に富んだ二首の即吟の道歌を詠んで、「ご用心なさらぬと、二度焼けをしますぞ!」とだけ仰しゃって奥に入られた宗忠神の御言葉を見事にフォローされた有名な御逸話

「『二度焼け』のおさとし」です。

 宗忠神のご指導によって、松岡清見(湯浅薩摩)という方が立派なお道教師になられる経過を、明るいご性分が伝わってくる今月の御教えとともに学ばせていただきました。

※大人-先生の意