復興に向けた宗教者円卓会議in仙台

平成26年7月号掲載

 去る5月19日と20日の両日、(公財)WCRP(世界宗教者平和会議)日本委員会(教主様は評議員、私は理事兼震災復興タスクフォース[企画チーム]委員)主催の「復興に向けた宗教者円卓会議in仙台」が仙台国際センター大会議室(仙台市)で開かれ、私は最初のセッション(部会)の座長をつとめました。この会議は、一昨年の仙台、そして昨年の福島に続いて開かれたもので、震災以来復興支援に取り組んでいる宗教者とNPO(市民ボランティア)の代表、そしてWCRP日本委員会の委員が協議する場として毎年開催されています。

 今年は、初めて地元の村井嘉浩宮城県知事が出席して宗教者に期待する旨の挨拶(あい さつ)を述べて下さって開会し、総勢80余名が今なお続く厳しい現状と課題について熱心な意見を交わしました。その模様は、地元のテレビや新聞にも広く報道されました。

 まず、私が座長をつとめた最初のセッションでは、日本政府の岡本全勝(まさかつ)復興庁統括官と、震災後に置かれた内閣官房震災ボランティア連携室室長をつとめた湯浅誠法政大学教授が基調発題を行いました。

 岡本統括官は「東日本大震災での宗教と行政」と題して講演し、宗教施設や宗教者と国や地方自治体が緊急時にあっても連携しにくい政教分離の現実を指摘して、すでに深刻な問題である被災者の心のケアへの取り組みを含めて今後の政教関係の在り方について示唆的な発言を行いました。また、「3年後の被災地の課題と宗教者の役割」と題して講演した湯浅教授は、立ち上がれる人と立ち上がれない人がいる“復興格差”に触れて、心のケアはもちろんのこと、伝統的に地域に根差した信頼のネットワークを有する宗教の潜在性を活(い)かして“地域力”を高める必要性を訴えました。

 基調発題の質疑応答の取り次ぎまでが座長としての私の役目でしたが、引き続いてのセッションで「精神的ケア」、「地域コミュニティ再構築」、「地域における社会的弱者への寄り添い」というテーマ別の現場からの報告が掘り下げられて議論されました。また、スペシャルセッションとして、震災発生半年後から2年間、合計105回にわたってFM仙台で放送され続けた「カフェ・デ・モンク」を主催した曹洞宗僧侶の金田諦應師と三浦正恵師、そしてラジオパーソナリティの板橋恵子さんが、心に残ったゲストの言葉を通して震災三年を振り返りました。

 2日間の締めくくりは、昨年福島での円卓会議で私が座長をつとめた「全体のまとめ」でした。他のセッションとは異なり、現場報告のない自由討論の時間で、発言を促す座長の苦労を知っているものですから、私は遠慮せず手を挙げて発言しました。

 「福島は原発事故という別次元の深刻な問題がありますが、宮城県と岩手県では、かなり復興が進んでいると多くの非被災地では思われています。例えば石巻市は復興景気に沸いているとか、リアス鉄道が南北ともに全線開通して三陸は元気になったとか…。しかし、平成の広域合併で吸収された旧町村の、例えば旧雄勝(おがつ)町や旧牡鹿(おしか)町は、実は石巻市でも復興が大変に遅れていることや、北リアス線と南リアス線の狭間の大槌町や山田町はますます“置いてけぼり感”が深刻であることを、たまたま私は支援活動を通じて知っています。こうした復興格差の現実を知ることが何よりの“風化防止策”だと思いますので、そうした、復興遅れの実例を、ぜひ教えていただきたい」

 私の発言が切っ掛けになり、具体的な発言が相次ぎ、時間とともに忘れられていく“風化”への配慮が出席者一同の共通意識として確認されました。“復興地”と呼ばれるべき被災地への思いを、常に弱めてはならないことを再確認した、この度の円卓会議でした。