被災者支援 祈り寄り添う
平成26年4月号掲載
平成7年(1995)1月17日午前5時46分、阪神・淡路大震災が発生し、本教は被災者の方々に温かい食事を食べていただこうと“炊き出し奉仕「わたがし作戦五十日」”を、副教主様を先頭に展開しました。
それから19年、副教主様には現在、宗教・宗派を超えて構成されるRNN(人道援助宗教NGOネットワーク)の事務局長として、東日本大震災をはじめ大災害の被災者支援に取り組まれてきていますが、過日、20回目の“1・17”に当たる日を前にして讀賣新聞(大阪本社発行)が副教主様にインタビュー。1月20日付同紙夕刊と同23日付同紙朝刊の「心」のページに紹介しましたので、本欄に転載させていただきます。(編集部)
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今月17日で、阪神大震災から丸19年となった。岡山市に本部を置く黒住教の副教主、黒住宗道さん(51)は同震災後、県内の宗教団体有志らで「人道援助宗教NGOネットワーク(RNN)」を設立し、事務局長として国内外で起きた大災害の被災者支援に取り組んできた。黒住さんは「これまでは物資支援が中心だった。これからは被災者の心を癒やす、新たな支援の形を模索していきたい」という。
1995年の阪神大震災。震災の2日後、黒住さんが被災地を訪れると、信者から「避難所には数千人単位で住民が身を寄せている。支援してほしい」と頼まれた。
その光景は今も忘れられない。神戸市内の中学校へ行くと、食事は届かず、負傷した人も吹きさらしの場所に寝かされていた。教主である父・宗晴さん(76)に相談し、神戸市内の中学校で50日間、朝夕計5000食の炊き出しを続けた。
食材を提供し、ボランティアに手を挙げたのは岡山市民ら。善意があっという間に集まり、みるみるうちに大きくなった。まるで、やわらかい「綿菓子」ができるように―。黒住さんは当時のことをそう、例える。
翌96年には中国・雲南省地震が発生。宗教・宗派を超え、岡山県内の団体が支援物資の調達やチャーター機への積み込みを共同で行ったのをきっかけに、RNNが発足した。現在は12団体が活動している。
RNNは毎月、被災地支援のあり方を学ぶ勉強会やボランティア講座を開催している。こうした取り組みを通じ、物資支援についてはノウハウを積んできたが、被災者の「心」の問題については、きちんと向かい合えていないという反省があった。
東日本大震災から1年余りたった2012年5月、世界各国で活動する国際医療NGO「AMDA(アムダ)」の菅波茂代表らとともに「災害時に被災地で必要とされる宗教者とは」のテーマでパネルディスカッションを開いた。その後も、東北の被災地の宗教者を招き、学んでいる。
黒住さんがそうした機会に思い出す話がある。東日本大震災直後、RNNの一員として被災地に入った僧侶のことだ。
その僧侶は遺体安置所に入るなり、遺族から「お経を上げてほしい」と懇願された。地元の寺院なども被災し、供養ができていなかったからだ。僧侶は一瞬、迷う。
RNNは様々な団体で構成されているだけに、普段は宗教色を極力出さないように活動していた。そして、すがる遺族を前に思い直す。「祈らない宗教者って何なんだ」。ほかの遺族からも頼まれるまま、読経を続け、深く感謝されたという。
黒住さんは言う。「被災者への物資支援とともに大切なことは、宗教者が祈り、被災者に寄り添うことではないか。それが、どれほど残された人々の支えとなるか。宗教者しかできないことを深く考えていきたい」
(安田弘司)