奉祈(いのりたてまつる) 人皆(ひとみな)の心の神の御開運
天照らす神の御徳(みとく)を取り次ごう
  互いの誠を活(い)かし合って

平成29年7月号掲載

 教祖宗忠神が説き明かされた御教え、すなわち黒住教の教えの全てに共通する特質は「いかす(生かす・活かす)」です。「道はいっさいいかすこと第一」、「何事もいかし上手になれ」という御教語は言うに及ばず、昇る朝日の心で常に陽気に前向きに楽天的に、一切神徳と感謝して、難有(なんあり)有難(ありがたし)と災いさえも有り難くいただこうとする御教えの数々は、全てを生かそう育(はぐく)もうとおはたらき下さる天照大御神の生々発展のご神徳(日の御徳)を信じ切って任せ切って、何もかも活かし切ることの大切が説き示されたものです。

 一方、申し上げるまでもなく本教の教えの神髄は、「人は天照大御神の分心(ぶんしん、わけみたま)をいただく神の子」です。森羅万象、世の中のあらゆる存在やはたらきを尊い八百萬神(やおよろずのかみ)と崇(あが)め称(たた)えてきた日本古来の神道の伝統的世界観が深められ高められて、全ての人の心の神たるご分心の存在が宗忠神によって明らかにされました。「人は罪の子でも穢(けが)れの子でもない神の子。日止(とど)まるが故に人。日と倶(とも)にあるが故に人」と、私たちの心の中の心(中心・本心・一心・真心)が、万物の親神である天照大御神と不二一体であると信じるからこそ、大御神と人とを貫く誠を錬り、誠を尽くすことが何よりも大切なのです。

 このように、御教えの本質をじっくり学ばせていただくことで自然と浮かび上がってきたのが、「互いの誠を活かし合って」という言葉(フレーズ)でした。

 本稿先月号で、“三(サン)世紀”の黒住教信仰者(お道づれ)の “為(な)すべきこと”は「天照らす神の御徳(みとく、日の御徳)を “取り次ぐ”こと」と申し上げました。それに加えて、「互いの誠を活かし合って」は、“三(サン)世紀”の黒住教信仰者(お道づれ)の “在るべき姿”です。

 私は2カ月後の教主就任に際して発表させていただく「告諭」の基本理念を、“三(サン)世紀”のお道づれの “為すべきこと”と “在るべき姿”を謳(うた)った冒頭の標語に示したいと思っています。

 人皆(全ての人)の心の神たるご分心の現れである互いの誠を活かし合って、天照大御神のご神徳(日の御徳)を取り次ごうと呼び掛けることが、「人皆の心の神の御開運を祈り奉(たてまつ)る」ことの実践であり、それはすなわち「まることの世界建設」と「御聖願(ごせいがん)達成」に向けた具体的な取り組みだと考えます。

 そして、教祖宗忠神が「まること」と称された、「天地自然は、本来調和のとれた丸い状態であり、循環作用の丸いはたらき」という真理と、「“まること”の “る”が約(つづ)まって “まこと(誠・信)”となる」(五代様のお言葉)という教えを踏まえて、「互いの誠を活かし合って天照らす神の御徳を取り次ぐ」ことは、自他共におかげ(日の御蔭(みかげ))をいただく、開運の本道であると確信いたします。

 以上の、黒住教のお道づれ(教徒・信徒、そして奉賛者・崇敬者)各位に向けた「告諭」の精神を明らかにした上で、“三(サン)世紀”の黒住教が世の中に広く発信するメッセージとして「人々に元気をもたらす黒住神道」という謳い文句が認知・浸透できれば…と、私は願っています。

 「元気は、元(もと)の気・元(はじめ)の気」です。宗忠神が「いきもの(天地生々の活気・神気)」と御教え下さった天照大御神の御心(ご神慮)であり、ご分心のはたらきそのものです。本教ほど、「元気」を主張(アピール)できる宗教はありません。

 いま「宗教」と申しましたが、「ウ冠(かんむり、家)が示す教え」と表記する「宗教」という表現を、立教以来、教祖の先祖代々の苗字(姓)をそのまま教団名として掲げる稀有(けう)な宗教教団である本教こそ堂々と名乗るべきですが、世の中の「宗教」に対する “抵抗感”を配慮したとき、「神道の教えの大元」たる正統性を世間一般に向けた表看板として掲げることは、賢明な選択肢の一つだと思います。日本史上に「伊勢神道」とか、「垂加(すいか)神道(山崎神道)」とか、「吉田神道」等が存在してきたように、教祖宗忠神が創唱された「黒住神道」を、公然と名乗ることに躊躇(ちゅうちょ)は不要だと思います。私が編纂(へんさん)させていただいた七冊の小冊子シリーズの題名(タイトル)にした理由は、実はそこにあります。

 劇的な時代の変化によって、今まで自然と親の世代から子の世代へと受け継がれてきた掛け替えのない伝統的な精神文化も、できるだけ分かりやすい言葉に改めないと伝わりにくい社会になりました。「今までと同じでは、尊いお道信仰も途絶える危機にある」という現実を正面から見据えて、全てのお道づれが本教の有り難さを、心新たに教団内外にしっかり取り次いで下さる黒住教でありたいと心から願っています。

 本稿の最後に、「尽誠道楽-“五つの誠”で開運人生-」の《奉仕の誠》【いかし上手に】で紹介した道歌三首を、深く心に留めて下さい。

 「生きるより外(ほか)に道なし活かすより
        外に誠の行(ぎょう)なかりけり」
 「生きるこそ誠なりけり活かすこそ
        誠の道のつとめなりけり」
 「天地(あめつち)を生かし楽しむ心こそ
        天照る神の誠なるらん」