根をしめて風に従う柳かな(教祖神発句)

 仏教がわが国に伝来したのは六世紀半ばで、それまでの日本には、今日「神道」と呼ばれる信仰がすでに人々の心に根付いていました。それは自然の全てのものに宿る神々への畏敬の念(八百萬神信仰)であり、人間もその一つでした。

 各村落には、氏神様を祀る所があり、その村に生まれて生き亡くなっていった先人先祖の霊様をお祀りするお社でした。このお社の総氏神様といえるのが、伊勢神宮です。ですから、日本人は皆、伊勢神宮の氏子となるのです。

 ところで、わが国の仏教では人が亡くなると仏様になり位牌が設えられますが、これは神道において先祖を霊主にお祀りするのが基になっています。わが先祖こそ、一番身近な守護神なのです。お道づれの中にも、家宗は仏教であって本教を信仰されている信徒の方が数多くいらっしゃいますが、それはまさに神道と仏教が融和している日本ならではの麗しい姿です。修行目標に示される日本古来の精神である「敬神崇祖(神を敬い、先祖を崇める)」の表れといえます。

 その昔には、ほとんどのお宅に神棚と仏壇がありましたが、今日、家族であっても離れて暮らすのが当たり前となっていて、こうした拝む対象を持たない方が増えています。そこで十年来、御三神(天照大御神、八百萬神、教祖宗忠神)とわが先祖を記した「御しるし」の拝戴を推進してきています。ぜひとも、拝む対象を設えて日々お守りしていただきたいと思います。

 「柳に雪折れ無し」との格言があります。しなやかな柳の枝は、雪が降ってもその重みに耐えて折れることがないが、堅い木は雪の重みで枝が折れることがあることを表しています。また「柳に風」との言葉もありますが、根をしっかりと張った柳の枝は柔らかくしなやかで、堅いものよりも、かえって耐えたり丈夫であることを意味しています。

 御代も「令和」となりましたが、生活様式が変わり個化の進む今日なればこそ、暮らしの基本に「敬神崇祖」という日本人の根っ子を締めて、風に従う柳のごとく今日の世をしっかりと生かされて生きてまいりましょう。