“コロナ下なればこそ”の信仰運動
今が再始動の時!
「ありがとうございます運動」
教主 黒住宗道

 昨年来のコロナ禍中にあって、私は本稿「道ごころ」を通して、コロナ下における心の在り様と日々の過ごし方を訴えてまいりました。「心鎮めて教祖宗忠神の御教えを深く学ぶ神機にしてもらいたい」との思いから、講演原稿を精読していただくべく、数カ月にわたる連続掲載も行いましたが、とりわけ読者、すなわちお道づれ各位の賛同を呼び掛けたのが、「今こそ、ありがとうなろう!」(昨年七月号)と「コロナ下なればこそ」(本年正月号)、そして「心ひとつに、活かし合って取り次ごう!」(本年二月号)でした。

 変異株と呼ばれる進化系を中心とした第四波の猛威に晒され、油断は絶対禁物、行動は一層慎まねばなりませんが、自粛するしかなかった昨年とは異なり、最大限に用心・心配しながら「前を向いて始動しなければならない」時でもあるのが、コロナ下二年目だと思います。

 もちろん、「危険を冒してでも行動を…」などと無茶なことを申し上げる訳ではありません。「当分この禍が続くことを覚悟せざるを得ないのであれば、我慢と忍耐だけではなく、達成感や喜びを共に分かち合えるような、建設的で生産的で能動的な実践に取り組みたいもの…」と考えを巡らす中に、「まさに今こそ、『ありがとうございます運動』に一層の誠を尽くす時ではないか!」との思いに至ったのです。

 申し上げるまでもなく「ありがとうございます運動」は、“ありがとうなる”を修行の柱とする本教ならではの信仰運動で、全国のお道づれが各々の意志で日々の感謝の心をお供えした浄財を教団の名の下に「世のため、人のため」に役立てるべく賛同が呼び掛けられてきました。束縛性が弱い分、「伊勢神宮式年遷宮ご奉賛」のような“目標”が打ち出された時と、そうではない時との差が大きいのですが、半世紀になんなんとする神道山時代の本教の社会活動の上で、重要な活力源になってきたことは明らかです。

 毎日、御神前に備え置いた奉賽箱(または、サンキューブ)に「今日の感謝の心」をお供えするのが趣旨に基づいた本来の方法ですが、定額を献納する形式が慣例化している方(または教会所)も多いのが実状です。必要な改善策を当局で検討してもらっていますが、とりわけ今月は年に二回の推進月間でもありますし、何と申しましても昨年来の〈奉仕の誠〉をテーマとした修行目標を掲げながら、教団的な呼び掛けが何もできないまま二年目も後半という時期になっている現実があります。そこで…

〈奉仕の誠〉
活かし合って取り次ごう!
“まること”の丸い心 丸いはたらき

 ご承知の通り、昨年と今年の修行目標です。本来ならば昨年早々に、「お道づれ(学び徒)の皆さん、ともに〈奉仕の誠〉を尽くしましょう!」と呼び掛けて二年目を迎えていなければならないところですが、コロナ禍のためそれどころではありませんでした。ただ、いまあらためて「ありがとうございます運動」の再始動の意義を考えた時、明年からの四年間も視野に入れて〈奉仕〉と〈感謝〉と〈反省〉の誠を尽くすという意味で、このタイミングは絶妙ではないかと思っています。

 「よりよく生きるための “五つの誠”」について説明する際にお話ししてきたことですが、〈祈りの誠〉と〈孝養の誠〉は縦軸(垂直軸)、〈奉仕の誠〉は横軸(水平軸)、そして〈感謝の誠〉と〈反省の誠〉は両軸が交差する中心で自らの内面を深く見つめる“謝の心(謝意)”です。すなわち、感謝と反省に根差した祈りと孝養の誠が奉仕の誠として具体化した信仰運動こそ「ありがとうございます運動」なのです。昨年、修行目標の発表にあわせて、私は「 “まること”とは、調和と循環、そして広がり」と定義しましたが、“丸い心”の調和と“丸いはたらき”の循環、そして“奉仕”の輪の広がりが「ありがとうございます運動」と一体的に展開されることで、「まることの世界」実現に向けた本教の社会的使命が果たせると信じます。

 コロナ下二年目に対する思いと修行目標、そして推進月間を重ねながら「ありがとうございます運動」のことを考えていた矢先、三月号の「道ごころ」を読んだ所長とお道づれ数名から期せずして同じ提案が寄せられました。「地球環境問題の切実さが訴えられ、その取り組みとしてSDGs※が連日話題になっている今日に、『宗教と生態学』の世界的権威とのインタビューに応じられたテーマこそ、『ありがとうございます運動』の目標に相応しいのではないか…」というものでした。実は、報告しそびれていましたが、あのインタビューの後、米国エール大学「宗教と生態学フォーラム」から諮問委員への正式要請があり受諾しています。地球環境というテーマは漠然としすぎていますが、何と申しましても“お日様教”たる本教ですから、「ありがとうございます運動」の目標として、ぜひとも前向きに検討させていただきたいと思っています。

 折しも、室山当局の下に発表された布教方針は「世の中の “ありがとう” を増やそう」です。心新たに、お道づれ(学び徒)各位が「ありがとうございます運動」に一層のまごころを込めて誠を尽くしていただけますことを念願しています。  最後に、教主が自ら吐露すべきことではないかもしれませんが、昨年来の「新型コロナウイルス感染症終息祈願『お祓い献読』」を率先垂範させていただく日々を重ねながら、シート十枚毎に大教殿に神納してきたのですが、これより先は「ありがとうございます運動」への奉賽に追加させていただこうと思っています。参考にしていただけたら幸いです。

※SDGs:二〇一五年の国連サミットで採択された、人類が果たすべき地球規模の「持続可能な開発目標」で、十七の大きな目標と百六十九のターゲットで構成されている。環境問題だけがテーマではないが、総合的な課題として重視されている。