台風の目のごとく澄み切って
教主 黒住宗道

平成29年12月号掲載

 黒住教教主に就任して3カ月目を迎えています。

 今まで何度もつとめさせていただいた“教主名代”の時とは比較にならない責務の重さを実感しながら、毎朝の御日拝に始まる祈りと奉仕の日々を重ねています。

 継承式当日にもお話し申し上げたことですが、あの日は前日の夜に岡山に最接近した大型の台風18号によって全てが祓い清められた台風一過の日本晴れのもと、七代教主として最高のスタートを切らせていただきました。継承式が行われた六代様の誕生日が9月18日、そして今年満55歳になった私の誕生日が6月18日、さらに息子の八代宗芳の誕生日が2月18日と、三代続きで縁の深い「18」を冠する台風には、前日までハラハラさせられましたが、当日のみならず、その後しばらく澄み切った東の空から昇る有り難いお日の出を連日拝ませていただける、まさに台風一過のおかげをもたらしてくれました。

 それ以降も、23日秋分の日の秋季祖霊祭、27日の三代宗篤(むねあつ)様正辰祭、そして10月1日の教主として初めての「ついたち御日拝」と開運祭、さらに、150余名の所長・教師・総代各位とともに教主就任を奉告した5日の伊勢参宮と、まずは順調に秋晴れの日々に恵まれて、いよいよ「第七代教主様ご就任記念」と題していただいた「神道山ご遷座記念祝祭」の佳日を迎えました。

 結果的に、22日の1回目の祝祭にお参り下さったお道づれの皆様には、本当に大変な中でのご参拝となりました。「超大型」、「猛烈な」と、これ以上の表現ができないような強い台風21号が近づきつつある中に斎行された記念祝祭は、千余名の皆様の気合というか、緊迫感ともいえる強烈な信の力を痛いほどに背中に感じながら唱和した大祓詞(おおはらえのことば)と、“嵐の前の静けさ”の深い静寂の中、高座で捧読(ほうどく)した「御訓誡(ごくんかい)七カ条」の一条一条の間(ま)の厳粛なる無音の一瞬という、忘れ難い感動を体験させていただいた初回になりました。楽しみにしていた園遊会を中止せざるを得なかったのは残念でしたが、台風に向かって帰ることになる四国や伊勢路からのお道づれや、すでに荒れ模様であった地域の皆様のことを思うと当然の決断でした。所長各位から無事帰還の報告を受けて安堵(あんど)したのも束(つか)の間、台風22号の発生を伝える天気予報に、「まさか…」と思いながら翌週を迎えました。

 台風22号とともに斎行された29日の2回目の祝祭で、「こうなったら“嵐を呼ぶ教主”と呼ばれても構いません!」などと冗談交じりで話したことですが、予期せぬ台風の連続しての“お参り”に、思いを巡らさずにはいられませんでした。

 新たな時代を迎えた黒住教が、天照大御神様ご一体の教祖宗忠の神様の有り難いお守りとお導きのもと、今後ますます前途洋洋・御道隆昌の歴史を刻ませていただけることは間違いないことと確信しています。お日様の有り難さに始まり、天地自然の恵みの尊さ、ご皇室尊崇、日本人としての誇り、ご先祖様への報恩感謝、親孝行の大切、家族・親族の繋(つな)がり、故郷・郷里の温(ぬく)もり、正直に誠実に生きることの大事、そして、こうした私たち日本人が先祖代々何よりも重んじてきた精神を「人となるの道すなわち神となるの道」として説き示して下さった教祖宗忠神への信仰、あえて列記させていただきましたが、これから先も決して失ってはならない“日本人魂”を信仰の柱とする「黒住神道」ともいうべき黒住教は、個人のアイデンティティーが一層求められ、その一方で孤独化ともいえる個化の進む時代に、ますます必要とされるに違いないと信じています。

 ただ、大切な宝物も社会にメッセージがきちんと伝わらないと人々は必要性を感じません。それは、親から子へ孫へという次世代への継承も全く同じで、今まで通りの方法では立ち行かなくなった時代にあって、「黒住教信仰の有り難さ」がしっかり取り次がれないと、家の信仰も繋らないというのが厳しい現実です。その道のりは決して平たんではないことを、今回の“手厚い台風による歓迎”を通してお示しいただいたのではないかと私は受け止めています。「教(おしえ)は天より起(おこ)り、道は自然と天より顕(あら)わるるなり」(「道の理(ことわり)」)の御教えそのままに、「嵐に立ち向かうぐらいの覚悟と根性で、自らが台風の目のごとく祓いに祓って澄み切った心で道の誠を尽くそう!」と決意を新たにしたことです。

 「どうせなら、3回目も最終回も…」とは全くの冗談で、おかげさまで後半は素晴らしい快晴に恵まれました。11月3日と5日の2回の祝祭で、私は一緒に記念撮影に臨んだ皆様に次のように話したことです。

 「『だんだん良くなった…』とは言いませんよ。それだったら『前半は良くなかった』ことになりますから。初回と2回目があったからこその今日(きょう)の晴天のおかげです。表現するなら、『ホップ!ステップ!ジャンプ!ハイジャンプ!4回まとめてスーパージャンプ!』です。前半にお参りになった方々の分もしっかりおかげをいただいて、心の中で御裾分(おすそわ)けして差し上げて下さい。お道の仲間だから『お道づれ』です。私は、全てのお道づれの皆様の教主として責務を果たしてまいります!」

 めでたし。めでたし。ありがたし。ありがたし。