寄稿二題

平成29年4月号掲載

 教主様は、様々な社会福祉活動に関わっていますが、この度、岡山県立岡山西支援学校と、不登校児のための学校法人希望学園に寄せられた一文を転載させていただきます。

 岡山西支援学校は、昭和51年、知的障がい児のための学校として、岡山県で初めて岡山県立西養護学校という名のもとに創立されました。それまでは、一般の小中学校で特殊学級としてあったものが、独立した学校として全国的に制度化されて生まれたものでした。

 いわば緊急避難ともいえる中で創立された当校は、旧来の他の施設を転用したもので、県立とは申せ学校としての体をなしていない状況にありました。そこで、教育後援会を作って広く県民市民の協力を仰ごうということになり、元岡山商工会議所会頭の梶谷忠二氏と、元岡山県教育長の川上亀義氏が副会長となって支えるからということで、教主様が教育後援会会長に就任されました。両氏亡きあとも、教主様は会長としておつとめになって今日に至っています。

 希望学園は、全国でも数校しかない不登校児のための私立学校で、岡山県の中央部に近い吉備中央町という山間地域にあって、全寮制でもって先生方は全人教育につとめられています。

 教主様は、この学園の教育後援会会長も懇請を受けて就任し、久しく様々な形でお支えになっています。
(編集部)

 「西支援」40年の美
教育後援会会長 黒住宗晴

 岡山西支援学校の創立40周年の今年の年頭、1月16日より、山陽新聞社本社のギャラリーで、生徒150名の絵画などの作品展が一週間に亘って開催されました。

 これは、社会福祉法人山陽新聞社会事業団(松田正己社長が理事長)の創立70周年記念事業の一つで、この展覧会を皮切りに、社会福祉法人ももぞの学園、同旭川荘、そして全県選抜展が、本展に続いて4月から5月にかけて開催される、とありました。

 開会に先立って、15日の朝刊に1ページ使って、本校の生徒さんの制作風景が、写真の数々を使って紹介されました。ここでは、本校の代表選手ともいうべき光井亮太君(高等部2年)の、まさに一心不乱に作品づくりにつとめている姿と、すでに多くのファンのいる彼独特の作品が登場していました。

 さらに、この一連の展覧会=きらぼし★アート展=の優秀作品を審査する、選考委員の備前焼の人間国宝伊勢崎淳氏、現代版画の高原洋一氏、また長く支援学校の教師として子どもたちの美術作品制作に関わってきた射矢諄一氏が、この展覧会に期待するところを交々語っていらっしゃいました。

 16日、出張先から帰宅しました私の目に飛び込んできたのは、山陽新聞夕刊の一面トップに掲載された開会の様子でした。

 生徒皆さんの喜び、校長先生はじめ先生方が胸熱くなられている姿が目に見えるようでした。翌日、早速、山陽新聞社本社に駆けつけた私は、玄関ロビーの上に掲げられた、4m四方ほどの大きな高等部の皆さん方の作品に魅せられてしまいました。それは、明日の光を確信しているような青空が大きく画かれた中に、まさに飛び立たんとする躍動感あふれる「ペガサス」が印象的な大作でした。

 これに、まるで対になるような形で、左の壁にこの社屋新築の時に設えられた伊勢崎淳氏の備前焼の陶壁が、ほぼ同じ大きさでありました。

 階段を上がった所にあるギャラリー(さん太ギャラリー)では、奇しくも河田校長先生と、同社会事業団の坂本専務理事にお会いできました。満面の笑顔の御二方にご案内いただいて、一つひとつの作品に見入りました。いずれもが、生徒さん方が真剣に取り組んだことが伝わってくる力作でした。それでいて力んだところのない、全く自然体の作品たちです。作り手が自然体であればこそ、見る人に直接飛び込んでくる力があるのかもしれません。

 上手にやろうとか、人がどう見るかなど、こざかしいものが消えているだけに、人間本来のものが湧き出ているような作品ばかりでした。大家と称えられた芸術家方が、年を重ねて、つまるところは我を離れた無心な境地での作品をめざし、また、そこに至る自己とのたたかいともいうべき厳しい時を経て到達されるところに、ポーンと、その過程を乗り越えて立っているとも思えました。

 かのパブロ・ピカソが、“子どもの画いたような絵がかけるのに90年かかった”と述懐したということを耳にしたことがありますが、「アール・ブリュット」と呼ばれるこうした子どもさんの作品は、こざかしいことに終始しがちな私たちへの警告のようにも思えました。

 お祝いのことば
教育後援会会長 黒住宗晴

 希望学園の小学校を卒業する6名の方々、さらに中学校を卒業する8名の方々、きょう感激の卒業式を迎えられましたことを、心からお祝い申し上げます。

 あなた方は、個性豊かなだけに人並み以上に苦しみや悲しみを抱いて、この希望学園に来られました。しかし、この自然の美しさに満ちた学園、そして心を込めて、きびしくも温かくご指導下さる先生方に恵まれて、きょうこうして卒業の日をお迎えになりました。

 皆様方は、学園創立20周年の記念式典、また竣工なった屋内運動場・希望ホールの完成披露の集いなど、生徒さん方の中心になっていきいきと活躍されました。

 嬉しく思いますことは、このような節目の集いのたびに、地元の吉備中央町の方々が次々と駆けつけて下さり、わがことのように奉仕して下さっていることです。このことはあなた方生徒さんが、いかに一生懸命学び活動しているかの表れです。とても有り難いことだと思います。

 さらに、きょうのこの日を迎えたことは、親御さん方、保護者の方のお喜びはいかばかりかと思うと、私も胸が熱くなってまいります。

 卒業、それはまた新たな出発です。どうか希望学園で学んだ年月を土台に、あなたにふさわしい新たな歳月を重ねられますよう、心から願い祈ってお祝いのことばといたします。